6-2-2.ENCORE 使用者登録して印刷産業を診断した結果

使用者登録をすることにより、ISIC分類の小分類レベルで、生態系および生態系の構成要素への依存と圧力のマテリアリティ、バリューチェーン上流・下流で関係する経済活動とマテリアリティを把握することができます。

印刷産業はSection(大分類)で「Manufacturing(製造)」、 Division(中分類)で「Printing and reproduction of recorded media(記録メディアの印刷および複製)」、Group/Class(小分類/細分類)で「「Printing and service activities related to printing(印刷および印刷に関連するサービス活動)」を選択することにより、マテリアリティを把握できます。

(1)直接操業

印刷産業では、生態系への依存で8項目、圧力で5項目が関連すると診断されます。依存および圧力ともに「非常に高い」と診断される項目はありません。

ENCOREでは印刷産業は「製造業」に分類されています。「製造業」で診断すると、生態系への依存で18項目、圧力で「中」以上と診断される項目は11項目です。製造業のなかでも印刷産業は生態系への依存と圧力のマテリアリティが低い分野と考えることができます。ちなみに、最も高く評価されるのは「農林水産業」で、生態系への依存は24項目、圧力で「中」以上と診断される項目は12項目です。

さらに、ENCOREでは、生態系サービス・圧力と生態系の構成要素(大気、陸上の地形、鉱物、海洋の地形、土壌と堆積物、種、構造的・生物的な健全性、水)を関係づけています。印刷産業に関しては、次のように関連付けています。

生態系の構成要素では鉱物のみが印刷産業は依存していません。一方、最も依存しているのは構造的・生物的な健全性です。

「構造的・生物的な健全性」については、ENCOREでは以下のように説明しています。

   構造的および生物的な健全性は、生態系の物理的構造と構成が自然変動の範囲内にどの程度

   収まっているかに関係します。樹冠高や植生密度といったこれらの構造特性は、生態系が

   提供する多くのサービスの基盤となっています。

LEAPアプローチのガイドライン本文では、健全性を「生態系の構成、構造、機能が自然変動の範囲内に収まる程度を指す」と説明しています。付録2「自然状態の変化を測定する方法に関するガイダンス」の表34では、地域レベルの指標として生態地域完全性指数(ErII)と生態系健全性指数(EII)を例示しています。これらの指標は、以下のように説明されていますが、専門的であるため解説できません。

  生態地域完全性指数(Ecoregion Intactness Index)

   生態地域健全性指数(ErII)は、陸上生息地の生態系の態様*を世界規模で評価する指標です。

   この指数は、生息地の範囲、生態系状態に影響を与える脅威となるプロセス(インフラの存在、

   農業、輸送ネットワークなど、生息地の質の指標として用いられる)、そして生息地の分断化

   といったデータレイヤーに基づき、理論上の未撹乱の基準状態と比較して、生態系の健全性を

   測定するものです。

   * : conditionを“態様”と訳しています。

  生態系健全性指数(Ecosystem Integrity Index)

   生態系健全性指数(EII)は、構造、構成、機能に関する情報(いずれも自然基準を基準として

   0~1のスケールで表示)を組み合わせ、地球上の陸域における1km解像度の生態系健全性を

   示す計測可能なメトリックスを提供します。構造情報は人為的圧力の地図から導出されます。

   構成情報は生物多様性健全性指数(Biodiversity Intactness Index、BIO)です。機能情報は

   純一次生産性(NPP)です。指数の値は、3つの要素のうち最も低い値となります。

   この方法論は予稿としてオンラインで公開されており、正式な科学的査読を待っています。

(2)バリューチェーン

ENCOREでは、バリューチェーンの上流・下流で関連する経済活動がフローでTier 2まで表示され、フローで表示される経済活動にカーソルを当てると、その経済活動の直接操業での依存と圧力がVH(極めて高い)、 H(高い)、M (中)、L(低い)、VL(極めて低い) 、ND(データなし)がそれぞれのパーセントが表示されます。

LEAPアプローチでは、「M~VH」と診断された項目に対して、Evaluateフェーズでリスクや機会を評価することを推奨しています。このため、「M~VH」と診断されるバリューチェーン上の経済活動を見つけるため、それぞれの経済活動に対して表示される「M」「H」「VH」のパーセントを合計してみました。下流側(Tier1および2)では、50%を超えるような高い経済活動はありませんが、上流のTier2では高くなる経済活動があります。「非木材林産物の採取」が依存で、「製材業」が圧力で、「造林業およびその他の林業活動」が依存と圧力の両方で高くなります。つまり、紙の原料となる木材関連の経済活動で依存と圧力が高いと診断されます。

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