「令和7年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」が6月6日に公表されました。テーマは『「新たな成長」を導く持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築』です。内容は、環境省の報道発表のとおりです。解釈を加えると、暮らしを支える自然から得られる恵みが人類の活動により破壊され、さまざまな環境問題を生じさせています。環境のもたらす恵みを将来世代まで引き継いでいくためには、現在の経済社会をネット・ゼロで、循環型で、ネイチャーポジティブが統合されたものへと大胆に変革していくことが必要不可欠です。昨年5月に閣議決定した第六次環境基本計画では、「循環共生型社会」を構築し、現在のみならず、将来にわたって「ウェルビーイング/高い生活の質」をもたらす「新たな成長」の実現を目指すことを打ち出しています。今回の白書では、「新たな成長」を導くグリーンな経済システムの構築をテーマに、昨今の環境の状況、施策等を交えて概説しています。
第1章は『「市場」~環境とビジネス~』」と題する章です。国内外の気象災害や生物多様性の損失などによる経済損失を考察し、GXを柱とする脱炭素の取組み、サステナブルファイナンス、環境情報開示などにより「新たな成長」を導いていく経済活動の取組みを解説し、環境価値を活用して経済全体を高付加価値化して、政府・市場・国民が当事者意識を持ち、対応な役割分担の下でパートナーシップを充実・強化していくことが必要としています。
第2章は『「政府」~循環経済・自然再興・炭素中立の統合に向けた取組~」と題する章です。国際的な動向を慨観した後、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブ、ネット・ゼロの同時達成に向けた2024年度の政府の取組みを紹介しています。国際的な動向では、G20、国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)、生物多様性条約第16回締約国会議(CBD-COP16)、国連ハイレベル政治フォーラム2024(HLPF2024)の成果を紹介。サーキュラーエコノミーでは、2024年8月に策定された第五次循環型社会形成推進基本計画、2024年5月に成立した再資源化事業等高度化法、海洋プラスチックに関する国際条約(海洋環境等におけるプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際条約)について解説しています。ネイチャーポジティブでは、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする「30by30目標」の取組状況を紹介しています。ネット・ゼロについては、脱炭素先行地域づくり、住宅・建築物の脱炭素化(ZEH、ZEB)、再生可能エネルギーの導入状況などを紹介しています。
第3章は『「国民」~地域・暮らしでの環境・経済・社会の統合的向上の実践・実装~」と題する章です。地域やそこに住んでいる人々の暮らしを、環境をきっかけとして豊かさやウェルビーイングにもつなげ得る取組みを紹介しています。「自立・分散型社会」を示す考え方である地域循環共生圏、温室効果ガスの排出量を減らしながら廃棄物を減す3R+Renewableによる資源循環や自然資源を大事にする視点でライフスタイルを変えていく国民運動「デコ活」、さらに、人の命と環境を守る基盤的な取組み(水俣病対策、熱中症対策、PFAS等の化学物質対策、鳥獣保護管理の強化)について紹介しています。
第4章は「東日本大震災・能登半島地震からの復興・創生」と題する章で、取組みの進捗と復興に向けた未来志向の取組みを紹介しています。