2026年度第1四半期まとめ

○ 国会で提出・成立した環境関連法

2026年通常国会(第221回)に環境関連では以下の6本の法律が提出されました。

これらの中で印刷産業に関わるのは⑥で、低濃度PCB使用製品に対して届出義務が課せられる点です。低濃度PCBは絶縁油中に0.5mg/kg超5,000mg/kg(0.5%)以下のPCBを含むもので、1990年以前に設置された変電所用コンデンサおよび1993年以前に設置された変電所用変圧器等に含まれている可能性があります。低濃度PCBの処分期限は2027年3月31日です。1993年以前に設置した変電施設を有する事業所では、改めて該当する機器の有無を確認する必要があります。低濃度PCBについては環境省のWebを参照してください。

① 下水道法等の一部を改正する法律案(国土交通省)

【経過】閣議決定: 3月27日、第221回国会、議案番号:38、本会議議決日:審議中、公布:審議中 法律第号

【概要】埼玉県八潮市で発生した老朽化した下水道管の破損に起因する大規模な道路陥没事故を受けて、強靱で持続可能な下水道の実現に向けた維持管理・改築の実施および事業基盤の強化、安全かつ円滑な道路交通の確保を図ることを目的に提案。

② 建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案(国土交通省)

【経過】閣議決定: 3月27日、第221回国会、議案番号:39、本会議議決日:審議中、公布:審議中 法律第号

【概要】建築物のライフサイクル全体での脱炭素化の促進、省エネ性能の一層の向上により、2050年カーボンニュートラルの実現を図るため、建築物のライフサイクルカーボン評価制度、先導的な省エネ技術を評価する大臣認定、上位住宅トップランナー制、建築物の環境性能の第三者認証・表示制度の措置を講じる。法律名を「建築物のエネルギー消費性能の向上及び脱炭素化の促進に関する法律」に改め、基本理念の新設などを行う。

③ 太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律案(経済産業省・環境省)

【経過】閣議決定: 4月3日、第221回国会、議案番号:49、本会議議決日: 5月29日、公布:6月5日法律第33号

【概要】2030年代後半以降に廃棄される太陽光パネルが顕著に増加することが見込まれることから、リサイクルの処理体制を構築するために提案。国が基本方針を策定、一定規模以上廃棄する場合は30日前の届出の義務付け、再資源化事業に認定されると都道府県ごとの許可を不要とする制度を導入。

④ 南極地域の環境の保護に関する法律の一部を改正する法律案(環境省)

【経過】閣議決定: 4月3日、第221回国会、議案番号:55、本会議議決日: 6月2日、公布: 6月10日法律第36号

【概要】平成17年に採択された「環境保護に関する南極条約議定書」附属書Ⅵでは、南極地域における活動により生ずる環境上の緊急事態に伴う責任を定めており、この締結に向けて措置を行う。具体的には、南極海域のみで活動する観光船を含めて、申請書と緊急時計画の事前提出、南極地域の環境に悪影響を及ぼすおそれのある事件が発生した場合の通報義務、環境上の緊急事態が発生した場合に主宰者に対応措置・費用負担の規定を整備する。

⑤ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案(環境省)

【経過】閣議決定: 4月10日、第221回国会、議案番号59:、本会議議決日:6月12日、公布:6月19日 法律第43号

【概要】使用済みの金属・プラスチック物品の保管又は再生を行う事業について許可制を導入、市町村への災害廃棄物処理計画策定義務等

⑥ ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法及び中間貯蔵・環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案(環境省)

【経過】閣議決定: 4月10日、第221回国会、議案番号60:、本会議議決日: 6月12日、公布:6月19日 法律第44号

【概要】低濃度PCB使用製品の届出義務と使用後は一定期間内の処分義務、高濃度PCB廃棄物と判明した場合の一定期間内の処分義務

○ 気候変動関連

(1) 2024年度の温室効果ガス排出量及び吸収量

2024年度の温室効果ガス排出量及び吸収量が4月14日に公表されました。温室効果ガス排出量は10億4,600万トンで、吸収量は5,230万トンで、温室効果ガス排出量・吸収量は9億9,400万トンで、初めて10億トンの大台を下回りました。前年度の2023年度比で1.8%の減少、日本が基準年としている2013年度比では28.7%の減少です。前年度から排出量(10.67→10.46 億トン)が減少した主な要因として、製造業の生産量の減少によるエネルギー消費量の減少や電源の脱炭素化の進展などを挙げています。一方、吸収量も前年度から減少しました(5,390→5,230万トン)。このうち、新たな吸収源として期待されるブルーカーボンは前年度とほぼ同じの32万トンでした。

なお、使用端CO2排出量原単位は0.416kgCO2/kWhで前年度の0.422 kgCO2/kWhから改善されています(確報値は0.416で、前年度から変化はない)。

(2) 令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績

2024年度のエネルギー需給実績が4月14日に公表されました。

最終エネルギー消費は企業・事業所他部門、運輸部門は減少した一方、家庭部門は横ばいでした。一次エネルギー国内供給は前年度比0.5%減で、化石燃料は1.3%減、非化石燃料は2.5%増となり、化石エネルギー依存度は低下しました。発電電力量は前年度比0.4%増加(9,911億kWh)でした。発電電力量の構成は、再生可能エネルギー(水力を含む)が0.2%pt増の23.1%、原子力が0.9%pt増の9.4%、火力(バイオマスを除く)が1.1%pt減の67.5%で、非化石電源比率は32.5%に上昇しました。この結果、電力のCO2原単位(使用端)は、前年度比1.8%減の0.45kg-CO2/kWhでした。

(3) その他

新潟県(補助金)、大阪府(脱炭素経営の支援)および滋賀県(脱炭素経営の支援)が中小企業を対象にした脱炭素の支援策を公表しました。

気象庁が『日本の気候変動2025を用いた気候変動解説の手引き』を公表しました。文部科学省および気象庁は2025年3月に「日本の気候変動 2025」(本編)を公表していまが、手引きはこの解説版です。本編は、国、地方公共団体及び事業者等が気候変動緩和・適応策の検討や影響評価を行う際に必要となるであろう最新の自然科学的知見を取りまとめたものです。この本編の公表後に行った利用者との対話を踏まえ、主に地方公共団体等の気候変動担当者が組織内や住民へ気候変動に関する説明を行う際に参考となるよう、本編に解説を追加したものです(「日本の気候変動2025」Web)。

博報堂DYホールディングスがSBT1.5目標の認定取得公表しました。認定取得の要件であるScope3目標として「購入品・サービスおよび出張からのGHG排出量を25%削減する」を設定しています(SBTiのWebから引用)。今後、広告印刷物などではGHG排出量算定の要求が強まることが予想されます。

SBTi(Science Based Targets initiative)は2026年6月、企業向けネットゼロ基準の全面改定版「Corporate Net-Zero Standard Version 2.0」を公開しました。

○ 資源循環

(1) 循環経済行動計画

「循環経済行動計画」が4月21日、内閣官房長官を議長とする循環経済に関する関係閣僚会議取りまとめられました。天然資源のみならず再生資源も獲得競争の時代に突入している中、日本は電子スクラップ(e-scrap)を始めとするリサイクル可能な資源の多くが海外に流出したり、焼却・埋立されたりしています。このような現状を踏まえて、官民で特に「再生資源供給サプライチェーンの強靭化」投資を促進し、循環経済への移行を加速して成長戦略に繋げていくことが重要になっていることから「循環経済行動計画」が取りまとめられました。

行動計画は5つの大きな柱から成り立っています。再生資源供給サプライチェーンの強靱化、日本をハブとする国際資源循環ネットワークの構築、地域循環資源の徹底活用による地域活性化、資源循環分野の国際ルールの形成、循環経済を国民運動への5つの柱です。

ポイントは「再生資源供給サプライチェーンの強靱化」であり、「メタルリサイクル推進戦略」です。鉄(グリーン鉄)、アルミ、銅および永久磁石に関して、マクロアプローチとして2030年までの再生材供給目標を掲げ、ミクロアプローチとして短期・中長期的な施策の工程表を掲げています。

「動静脈連携(製造業と資源循環産業)による産業競争力強化」の項では、容器包装由来の高品質な再生プラスチック供給も取り上げています。しかし、必要な制度的措置の検討にとどまり、具体的な内容はありません。また、官主導のプラットフォームであるCPs(サーキュラー・パートナズ)については持続的な運営のあり方を検討するとしていますが、海洋プラスチック問題を起点として民間主導で発足されたCLOMAが行っているプラスチック製品の3Rなどの取組みには触れられていません。

「メタルリサイクル推進戦略」以外の項目に関しては、再資源化事業等高度化法の認定事業、不適正スクラップヤードへの規制強化、太陽光パネルのリサイクル法制化、食品ロス削減、SAFの導入促進など既存政策を再整理して行動計画に取り込んだ感があります。

(2) 食品ロス削減のマニュアルや手引きの改定版などを公表

年度明けの4月に、環境省は6種類の食品ロス削減のマニュアルや手引きの改定版などを公表しました。これらは、食品関連事業者(食品製造業、食品卸売業、食品小売業、外食産業)および自治体向けに策定されたものです。

印刷産業が取り組む食品ロス削減対策は、社員食堂でのロス・食べ残し削減、会食などでの食べ残し削減・持ち帰りで、業界として重点的に取組む分野ではないと考えます。

(3) その他

ケミカルリサイクルに関して、出光興産・竹中工務店などが消費者使用済み廃プラを建設資材にブックオフとファミリーマート 都内30店舗に「R-LOOP」設置しCEを推進キユーピーなど異業種6者が連携してプラ容器の回収から再商品化・販売まで実現などの新聞発表がありました。

2024年5月に施行した『資源循環高度化法』では、廃棄物処理法の廃棄物処分業の許可等の各種許可の手続を不要とする2つの特例を設けています。高度再資源化事業(累計1)と高度分離・回収事業(累計2)です。4月30日に同法に基づく初の認定が行われました。累計1では石坂産業㈱(ポリプロピレン、金属)とDINS関西㈱(二次電池)が認定され、累計2では㈱浜田(廃太陽光電池)です。認定状況は環境省のWebに掲載されています。

○ 自然共生

(1) 令和7年度外来生物問題等認知度調査等の結果

環境省が6月9日、 「令和7年度外来生物問題等認知度調査」結果を公表しました。 「外来種」又は「外来生物」に対して高い認知度示している一方、経年変化では減少傾向にあるという結果です。

印刷業界では生物多様性に関する取組みは、主として森林認証紙の選択です。外来種対策は、希少生物種の保護とともに、業務とは直接関係ないものの、ボランティア活動として社員が参加することには意義があります。このとき、調査項目となっている以下の「外来種対策の例」が参考になります。

  • 見慣れない生物(外来種かもしれない生物)や外来種を見かけたら地方公共団体に通報する
  • 栽培する植物(庭木等を含む)や飼育する生物に在来種を選ぶ
  • ペットを野外に逃がさない・栽培する植物を適切に管理し野外に広がらないようにする
  • 外来種を飼育・栽培する前に責任をもって飼育・栽培できるかよく考える
  • 外来種問題について他の人と話す
  • 外来種の防除(駆除)活動に参加する
  • 外来種問題について学ぶ
  • 服の付着物や靴底の泥を確認し、外来種の非意図的な運搬を防ぐ

○ 環境経営

(1) 令和8年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書

6月5日の環境の日に「令和8年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」が公表されました。4月に「循環経済行動計画」が策定されたことから、テーマは「循環経済(サーキュラーエコノミー)で日本列島を強く豊かに」です。第1部は同計画の内容の紹介です。第2部は環境省が行った施策が記載されています。

(2) 「環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き」(別冊)実践事例集

環境省は6月26日、「環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き」(別冊)実践事例集公表しました。「環境課題の統合的取組」とは、気候変動、自然資本、循環経済などの複数の環境課題の同時解決に資する取組みのことで、その情報開示の方法とともに、昨年の2025年6月に「環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き」を公表しています。この手引きをもとに環境省は「令和7年度脱炭素実現に向けた統合的取組実装モデル支援事業」を実施し、アスクル㈱、㈱極洋、大日本印刷㈱を対象に行われた事業を事例集としてまとめました。

ガバナンスおよびリスク管理では極洋の事例、戦略(リスク・機会の特定、シナリオ分析の統合)ではアスクルの事例、戦略(対応策の検討)および指標と目標では大日本印刷の事例を取り上げています。

大日本印刷は「統合的取組・開示」への高度化を目指して令和7年度事業に参加しています。この事業を通じて、一般的な公開シナリオの単なる参照から脱却するため独自のシナリオの要素を整理、既存指標を「攻め」と「守り」の観点で「関連指標」「ガードレール指標」として再定義し、リスク、戦略、環境・財務インパクト、KPIを一気通貫で紐づけた「リンケージマップ」を構築することで、効果的な戦略立案に向けた基盤を構築したと成果を挙げています。この成果は、2026年度の統合報告書に反映させるとしています。さらに、継続的に見直し、「環境戦略と経営戦略との統合」と「実効的な環境施策の推進」を実現するとしています。

(3) SSBJが文書を公表

サステナビリティ基準委員会(SSBJ)から2つの文書が公開されました。

ひとつは5月29日公表の「有価証券報告書におけるSSBJ基準への言及について(注意喚起)」です。SSBJ基準のすべての定めに準拠していない場合は、当期においてSSBJ基準のすべての定めには準拠していない旨を明示することが適切であり、SSBJ基準のすべての定めに準拠することを予定している時期や、SSBJ基準のすべての定めに準拠することに向けた当期の進捗の状況について開示すべきと注意喚起しました。そして、SSBJ基準のすべての定めに準拠していない場合は、「SSBJ基準を踏まえて開示している。」「SSBJ基準を考慮して開示している。」「SSBJ基準を参考にして開示している。」などの記載は不適切と指摘しています。

ふたつめは、6月11日公表の「サステナビリティ開示実務対応基準第1号「温対法におけるSHK制度の定める方法により測定し報告する温室効果ガス排出を用いて『気候基準』の定めに従う場合の開示」です。サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」(気候基準)において、第49項で「GHGプロトコル(2004年)」に基づいてGHG排出量を測定することを定めていますが、同項のただし書では『温対法』の算定・報告制度であるSHK制度による測定も認めています。しかし、それには不明確な点があったため、明確化を目的に発行しています。これにより、①SHK制度の「基礎排出量」を使用すること、②SHK制度では報告対象となっていないスコープ2ロケーション基準排出量は、SHK制度の間接排出と同じ活動量を使用して測定することが明確化されました。

○ 化学物質管理

情報はありません。

○ サステナビリティ情報開示

環境経営(3)参照。

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