「SBTN’s Materiality Screening Tool(以下、SBTN’s MST)」は、Science Based Targets Network(SBTN)が自然関連分野で科学に基づく目標を設定する際に初期の段階(SBTN Step1)で環境影響をスクリーニングするツールとして開発されたものです。

SBTNは2019年に、CDP、世界資源研究所(WRI)、WWF、国連グローバル・コンパクト、コンサベーション・インターナショナル、UNEP-WMC、世界経済フォーラムにより設立されたイニシアチブで、ロックフェラー・フィランソロピー・アドバイザーズの財政支援プロジェクトにより運営されています。企業と都市の両方を対象に、気候のみならず、生物多様性、陸地、淡水、海洋などの環境への影響に包括的に対処できるような科学的根拠に基づいた自然に関する目標を開発しています。
SBTN’s MSTは、利用登録は不要で、無料で利用できます。ISIC分類に従って、直接操業と上流の業務内容*(セクター、活動)について診断できます。しかし、「印刷産業」に関しては、直接操業診断のWebページに表示される産業分類(ISIC Group DO)の選択肢には「印刷産業」の選択肢がないため、Webでは診断ができません。バリューチェーン上流では、「印刷および印刷関連サービス活動」の選択肢があるものの、内容の整理には時間を要します。このため、ホームページからダウンロードできるエクセルファイルを使用して診断した方が良いです。具体的には、ホームページの「MST Methodology and Raw Data」をクリックするとエクセルファイル「Materiality-Screening-Tool-v1.1」がダウンロードされ、この中にある「4 – Full direct operations data」シートから直接操業を、「5 – Full materiality dataset UP」シートからバリューチェーン上流の業務内容を診断することができます。
* : 「production _ process」を「業務内容」と訳しています。
直接操業の診断ができる「4 – Full direct operations data」シートで「printing」を検索すると、大分類:製造業、中分類:印刷業及び記録媒体複製業、小分類:記録媒体複製業が見つかります。しかし、ISICの小分類では、「印刷業及び印刷関連サービス業」は「記録媒体複製業」とは区別されている(「5-1.国際標準産業分類(ISIC)」を参照)ため、ダウンロードから得られたエクセルからでは、印刷業は診断できないことになります。「印刷および記録媒体の複製-記録媒体の複製」の業務内容では「インフラの保有」のみで、インパクトは非温室効果ガス大気汚染物質、土壌汚染物質、固形廃棄物、水質汚染物質、水利用です。このうち、土壌汚染物質、水質汚染物質、水利用の項目で、SBTNが定める「生産プロセスの重要性しきい値」以上となるため、SBTNの目標設定プロセスでは次の段階に進み、目標設定の対象とすべきか検討する項目となります。

この「4 – Full direct operations data」シートの大分類には、「管理およびサポートサービス活動」「教育」など項目もあり、「印刷業」に関連する業務活動から診断することも可能です。ただし、業務活動の業務内容は「インフラの保有」が大部分であり、印刷産業に固有の要素はありません。

一方、バリューチェーン上流側を診断できる「5 – Full materiality dataset UP」シートは、直接操業のISIC小分類とそれに関連する上流のISIC細分類ごとの業務内容についてのインパクトをまとめたもので、388,925行あります。印刷産業に関しては、ISIC小分類で「印刷および印刷関連サービス活動(Printing and service activities related to printing)」で整理され、上流側の197のISIC小分類に産業分野に関する業務内容に分解し、圧力要因と紐付けし、合計1,647項目に対して点数付けおよびハイインパクトコモディティとの関連付けを行っています。この解釈は省略します。
SBTN’s MSTは、インパクトのマテリアリティを診断するツールですが、直接操業では「印刷業」の選択肢がないため診断できません。バリューチェーンでは「印刷業」の選択肢がありますが、解釈には専門知識が必要です。