1.法律

1.法律を守ろう!

法令遵守は事業活動の大前提です。環境マネジメントでも、法令遵守の確認が不可欠です。

日本印刷産業連合会が発行している「印刷産業における環境関連法規集(2022年版)」には、環境関連法規として、32の法律を取り上げています。『廃棄物処理法』や『フロン排出抑制法』はすべての事業者が適用を受ける法律ですが、その他の法律は適用される要件に該当しなければ適用されません。この要件さえ分かれば、詳細を理解する必要はなくなり、その時間を他に使うことができます。

また、「遵守する」とはどういうことか考えます。『環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律』という法律があります。通称『環境配慮促進法』と呼ばれ、国立の研究所や国立大学などに環境報告書の発行を義務付けた法律です。事業者に対しては、第4条で「その事業活動に関し、環境情報の提供を行うように努めるとともに、他の事業者に対し、投資その他の行為をするに当たっては、当該他の事業者の環境情報を勘案してこれを行うように努めるものとする。」と努力義務を課しています。エコアクション21では、対象となる環境関連法規の中には含まれていません。このことから、どういうことを「遵守する」か理解できます。

ここでは、このような視点から、「印刷産業における環境関連法規集(2022年版)」に沿ってポイントを説明し、関係する条項を示します。

「印刷産業における環境関連法規集(2022年版)」は、以下から購入できます。

本文中にも掲示してありますが、適用の有無を簡易チェックするエクセルです。バグ、解釈の誤りがあれば指摘してください。

(補足)産廃処理委託で最低限知っておくべき事項

 廃棄物処理委託で遵守すべき法定事項は、都道府県のホームに掲載されています。例えば、「工場がある都道府県名+産業廃棄物」で検索すると関係するWebページが表示されます。東京都では表示された「産業廃棄物対策|廃棄物と資源循環 – 東京都環境局」をクリックして、遷移した画面の右側に並んでいる項目の「排出事業者の方」をクリックして遷移したページに遵守すべき法定事項が記載されています。東京都のように詳細に記載してくれる行政もあれば、丁寧に記載していない県もがあります。

 環境省は「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」(https://www.env.go.jp/content/000126051.pdf)(以下「環境省チェックリスト」)を公開しています。

 ここでは、これらを踏まえて、最低限知っておくべき事項を紹介します。それは以下とおりです。

  • 許可取得業者と、
  • 事前に書面で契約を締結し、
  • 廃棄物を引き渡す際はマニフェストを交付する。
  • 紙マニフェストを交付した場合は、翌年度6月末日までに行政に報告する。
  • 紙マニフェストは5年間保存する。
  • 契約書は終了後5年間保存する。
  • 保管場所に表示を設置する。

それぞれ解説します。

(1) 許可取得業者

 「許可業者」が意味するところは、以下のとおりです。

  ① 許可証のコピーが手元にある

  ② 許可期限が切れていない

  ③ 委託する産業廃棄物が許可範囲に含まれている

 許可証は3通必要です。

  a. 工場がある都道府県の産業廃棄物収集運搬業許可証

  b. 処分場所がある都道府県の産業廃棄物収集運搬業許可証

  c. 産業廃棄物処分業許可証

 ただし、処分場所が工場と同じ都道府県にある場合は、aとbは同じであるため2通です。

「都道府県」と記載しましたが、県庁所在地など一定規模の市は、都道府県から権限が委譲されて、処分業、場合によっては産業廃棄物収集運搬業の許可を付与する権限があります。このような場合は、市の許可証になります。以下では「都道府県」と記載した場合は、このような「市」を含みます。

 「産業廃棄物収集運搬業許可証」と記載しましたが、廃PS版現像液のように特別管理産業廃棄物を委託する場合は、特別管理産業廃棄物の収集運搬業、処分業の許可証となります。

(2) 事前に書面で契約を締結

 産業廃棄物処理委託契約書(以下「契約書」)締結は法定義務で、処理を委託する前に契約書を締結しないと「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、または両方」が課せられるうえ、不法投棄に巻き込まれた際は原状回復の措置命令の対象になります。

 記載すべき事項は法律で定められています。具体的には、『廃棄物処理法』施行令第6条の1第4号ですが、東京都のWebページには施行規則の条項を含めて記載されています(https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/industrial_waste/on_waste/keiyakusyo/)。環境省チェックリストではp11、12に記載されています。法定事項を取り込んだ「モデル契約書」を東京都や公益社団法人全国産業資源循環連合会などが公開しています。

 後者の契約書は、各都道府県の産業資源循環協会のページで入手することができることがあります。例えば、福岡県産業資源循環協会は公開しています。

処理業者が提示する契約書は後者を参考にしていることが多いです。そのまま使用して問題はありません。

 ポイントは、「空欄をなくす」ことです。記載すべき事項であるために記載欄を作ってあり、空欄がある契約書は法定要件を満たしていないと考えるべきです。

(3) 廃棄物を引き渡す際はマニフェストを交付する。

 マニフェストの交付も法定義務で、交付せずに産業廃棄物を引き渡すと「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、または両方」が課せられるうえ、不法投棄に巻き込まれた際は原状回復の措置命令の対象になります。

 記載事項は法律で定められています。具体的には、『廃棄物処理法』施行規則第8条の21第2号です。東京都のWebページに法定記載事項がまとめられています(https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/industrial_waste/on_waste/manifest)。環境省チェックリストではp17に記載されています。委託する業者によっては独自の様式を使用しているケースもあります。

 マニフェスト記載の責任は「排出者」、つまり委託する者にあります。あらかじめ処理業者に記載してもらうことは違法ではありませんが、記載に誤りがあっても処理業者ではなく、排出者が責任を負うことになります。

 ポイントは、「空欄をなくす」ことです。流通しているマニフェストには法定記載事項ではない「処理方法」の記載欄がありますが、これを含めてすべての欄を記載することが大切です。「委託数量」は、委託する時点では正確な重量が分からないので未記載のまま交付しがちです。環境省の通知(環廃産発第110317001号 平成23年3月17日)では「重量、体積、個数などその単位系は限定されないこと」とあり、フレコン袋数やプレス角数、ポリタンク個数などを記載して、交付しなければなりません。

 なお、電子マニフェストを利用すると、法定事項の登録漏れミスの可能性は低くなります。

(4) 紙マニフェストを交付した場合は、翌年度6月末日までに行政に報告する。

 紙マニフェストを1枚でも交付すると、翌年の6月末日までに都道府県知事宛に「管理票交付状況報告書」を提出しなければなりません。押印は不要ですが、持参しないと受領印を押印してくれない自治体が多くなっています。つまり、返送用の封筒を同封しても返送してくれないということです。提出したことを記録として残すためにも、持参して受領印がある報告書を保存することをお勧めします。

 様式や方法は工場がある都道府県のWebページなどで確認してください。

 紙マニフェストを1枚も交付せず、すべて電子マニフェストを利用した場合は、報告書の提出は不要です。

(5) 紙マニフェストは5年間保存する。

 7枚綴りのマニフェスト(いわゆる「直行用マニフェスト」)の場合は、手元にはA票、B2票、D票、E票の4枚が残ります。これをセットにして、交付してから5年間保存しなければなりません。法では第12条の3第2項「管理票交付者は、当該管理票の写しを当該交付をした日から環境省令で定める期間保存しなければならない」と定め、施行規則第8条の21の2で「5年間」と規定しています。

 マニフェストの流れについては、工場のある都道府県のWebページなどで確認してください。

(6) 契約書は終了後5年間保存する。

 契約書も終了後5年間の保存義務があります。モデル契約書では「自動更新」されるため、解約手続きをしない限り未来永劫継続されます。解約すれば解約日から5年間保存することになります。

 注意が必要な点は、委託する産業廃棄物を追加したりして、処理委託契約書を更新するときです。更新により旧契約は失効し、終了することになります。したがって、旧契約は、契約の更新日から5年間は保存が必要です。

(7) 廃棄物保管場所に表示を設置する。

 廃棄物に関心をもつ人が工場を巡回するときに、必ず確認するのは「法定表示の有無」です。法では第12条第2項で「保管基準」の遵守義務を課し、これを受けた施行規則第8条第1号ロで掲示板の設置を義務付けています。しかも、「縦及び横それぞれ60cm以上であること」と規定しています。罰則はありませんが、廃棄物管理のポイントのひとつです。

 掲示板は市販されています。自作でも問題はありませんが、法定事項である産業廃棄物の種類、保管場所の管理者の氏名・連絡先、さらに屋外で容器を用いずに保管する場合は高さの上限の記載が必要です。産業廃棄物の種類では、特別管理産業廃棄物と普通の産業廃棄物の区別が必要であり、蛍光灯など水銀を含む場合は「水銀使用製品産業廃棄物」の記載も不可欠です。

 以上が産業廃棄物の処理委託で最低限知っておくべき事項です。

 このほかに、印刷会社では、PS版現像装置を設置している場合は、使用している現像液によっては特別管理産業廃棄物に該当し「特別管理産業廃棄物管理責任者」の設置が必要になります。PCBを含む廃トランスや廃コンデンサーを保管している場合も同様です。

 処理施設の実地確認は法定事項ではありませんが、適正処理確保の観点から推奨します。

 詳細について、都道府県のWebページや環境省チェックリストを参照してください。

事業場を訪問して廃棄物管理を確認する際の手順を紹介します。

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