2026年度第1四半期のまとめ

○ 国会で提出・成立した環境関連法

2026年通常国会(第221回)において環境関連で提出された6本の法律のうち、第1四半期に公布されなかった2法律(下水道法改正、建築物省エネ法改正)が、7月に入って順次成立・公布されました。

① 下水道法等の一部を改正する法律案(国土交通省)

【経過】閣議決定: 3月27日、第221回国会、議案番号:38、本会議議決日:7月15日、公布:7月15日法律第65号

【概要】埼玉県八潮市で発生した老朽化した下水道管の破損に起因する大規模な道路陥没事故を受けて、強靱で持続可能な下水道の実現に向けた維持管理・改築の実施および事業基盤の強化、安全かつ円滑な道路交通の確保を図ることを目的に提案。

② 建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律案(国土交通省)

【経過】閣議決定: 3月27日、第221回国会、議案番号:39、本会議議決日:7月23日、公布:7月31日法律第75号

【概要】建築物のライフサイクル全体での脱炭素化の促進、省エネ性能の一層の向上により、2050年カーボンニュートラルの実現を図るため、建築物のライフサイクルカーボン評価制度、先導的な省エネ技術を評価する大臣認定、上位住宅トップランナー制、建築物の環境性能の第三者認証・表示制度の措置を講じる。法律名を「建築物のエネルギー消費性能の向上及び脱炭素化の促進に関する法律」に改め、基本理念の新設などを行う。

政省令改正に関しては、印刷産業に関わるものとして以下の公布がありました。

・ 【省令】エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律施行規則の一部を改正する省令

  (経済産業59)[令和8年7月1日(本紙 第1738号)]

  第103条(電子情報処理組織による届出書等の提出に係る特例)の改正

・ 【省令】建築物用地下水の採取の規制に関する法律施行規則の一部を改正する省令(環境20)

  [官報令和8年7月17日(本紙 第1750号)]

  地下水還元型地中熱利用システムの普及に向けて、建築物用地下水の採取を認める要件を追加

・ 【法規的告示】無害化処理に係る特例の対象となる一般廃棄物及び産業廃棄物の一部を改正する告示(環境39)

  [令和8年8月20日(号外 第186号)]

  無害化処理の対象を低濃度PCB廃棄物からPCB廃棄物に変更

・ 【法規的告示】低濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る無害化処理の内容等の基準等の一部を改正する告示

  (環境40)[令和8年8月20日(号外 第186号)]

  無害化処理の対象を低濃度PCB廃棄物からPCB廃棄物に変更

・ 【政令】廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(政令278)

  [令和8年9月15日(号外 第205号)]

  施行日を令和8年9月16日とする。

・ 【政令】建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令

  (政令291)[令和8年9月16日(号外 第206号)]

  施行日を令和9年4月1日とする。

主なものは今年の通常国会で成立した法律の施行に向けた政省令が整備です。それ以外では、『エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律』施行規則改正により、省エネ法のエネルギー使用などは原則として「温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)」を使用して届け出ることに変更されました。『建築物用地下水の採取の規制に関する法律』施行規則改正では地下水還元型地中熱利用システムで地下水の利用が可能になりました。

○ 気候変動関連

今年も夏の過去最高気温を更新した報告がありました。欧州のコペルニクス気候サービスは、今年8月の世界の平均地表気温が産業化前より1.65℃高く、2025年11月以来初めて1.5℃を超えた月となり、平均海面温度も21.1℃と過去最高であったと報告しています。

8月26日にネパールと中国の国境付近で発生した土石流災害は温暖化による氷河の融解が原因とみられ、両国で合計約1,500人が死亡し、大阪の日本人家族5人を含む6,000人以上が行方不明になっています。10月5日に捜索・救助活動を中断するとネパール政府が発表しました。

○ 資源循環

● 第五次循環型社会形成推進基本計画の進捗状況の第1回点検結果

第五次循環型社会形成推進基本計画(第五次循環基本計画)の進捗状況の点検結果が9月17日に公表されました。

第五次循環基本計画は令和6年8月に閣議決定され、今回は最初の評価・点検となます。主として2023年度の結果に基づき、目標年度は2030年度です。

第五次循環基本計画は、循環型社会の全体像に関する指標として「物質フロー指標」(6指標)、物質フロー指標として表すことができない取組の進展度合いを計測・評価する指標として「取組指標」(4指標)、さらに「重点分野で示されている方向性の達成状況を示す指標」(目標未設定を含めて21指標)で構成されています。

 「物質フロー指標」のうち、目標達成見込みは「最終処分量」のみで、「資源生産性」、「一人当たり天然資源消費量」および「再生可能資源・循環資源の投入割合」は僅かな改善、入口・出口側の両方の「循環利用率」は横ばい傾向で、いずれも目標達成に対して「注意が必要」な状況と説明しています。

「取組指標」は、「循環型社会ビジネスの市場規模」、「国民の意識・行動(廃棄物の減量化や循環利用、グリーン購入)」、「循環経済への移行に関わる部門(廃棄物部門)等由来GHG排出量」、「カーボンフットプリントを除いたエコロジカルフットプリント」です。印刷産業が関係する指標は、国民の意識・行動の調査結果です。具体的には、「廃棄物の減量化や循環利用」、「グリーン購入」と「具体的な3R行動」の実施率で、横ばいから低下気味にあり、目標達成に対して「さらなる取組が必要な状況」と説明しています。

「重点分野で示されている方向性の達成状況を示す指標」に関しては、「循環型社会部会における点検結果」として状況が説明されています。21指標のうち、目標が設定されていて印刷産業が関わる指標は、「バイオマスプラスチックの導入量(2030年度約200万トン)」、「産業廃棄物委託処理量に対する電子マニフェストの捕捉率(同75%)」です。「バイオマスプラスチックの導入量」の2022年度実績は15万トンで、「さらなる取組が必要な状況」です。「電子マニフェストの捕捉率」の説明はありません。

このほかに、印刷産業が関係する指標には、「重点分野2.資源循環のための事業者間連携によるライフサイクル全体での徹底的な資源循環」で「指標と合わせて進捗を把握する取組・目標」の中で取り上げられている「プラスチック再生利用量倍増」、「食品ロス量半減」、「金属リサイクル原料の処理量倍増」があります。しかし、これらの指標に関して推移は記載されていますが、達成見込みの説明はありません。

第五次循環型社会形成推進基本計画から、印刷業界としては、廃棄物の減量化(リサイクル化による最終処分回避)およびグリーン購入に加え、電子マニフェスト利用、可能であればバイオマスプラスチック導入が循環型社会形成に沿った取組になります。

○ 自然共生

(1) 「調達におけるネイチャーポジティブに向けた実践ガイドライン」の策定

環境省は7月14日、「調達におけるネイチャーポジティブに向けた実践ガイドライン」を公表しました。「生物多様性国家戦略2023-2030」の基本戦略の1つに「ネイチャーポジティブ経済の実現」があります。この実現に向けて策定されたのが「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025-2030年)」です。これを実践するためのガイドラインが「調達におけるネイチャーポジティブ配慮の推進」です。

「概要版」で示された基本的な事項は、調達方針を経営システムに組み込み、直接操業およびサプライチェーンの負の環境影響を特定・評価し、軽減するためにサプライヤーを選択し、実施状況を追跡し、情報開示することです。

一方、ガイドライン「全体版」では、さらに細かく記載され、基本事項が必須事項と推奨事項に区別されてまとめられています。必須事項では、「調達方針の策定」、「目標・KPI設定及びコミットメントの提示」、「サプライチェーン上のリスクの抽出・評価」、「透明性・トレーサビリティの確保」、「損失回避・軽減に向けた計画を策定済みのサプライヤーからの調達」、「自然資本の損失に寄与しないサプライヤーからの調達」、「取組の実施状況の把握」が挙げられています。推奨事項では、「サプライヤーエンゲージメント方針・戦略の策定」、「自然資本の保全・回復・創出に積極的に取り組むサプライヤーからの調達」、「取組の実施状況や自然の状態の定量測定」、「情報開示」、「消費者等への周知」などが挙げられています。

事業者は、SBTNのHigh Impact Commodity Listに掲載されたコモディティ(商品)やEUDR(EU Deforestation Regulation / EU 森林破壊防止規則)の対象コモディティなどのように自然資本における重要度が高く、かつ取引量の多いコモディティは推奨事項に取り組むことを推奨しています。FSCなどの認証制度は有用であるが、取得が継続しているかなど定期的な見直しも必要としています。

サプライチェーンの自然資本関連情報については、コモディティのライフサイクルにおける自然への影響が大きい、すなわち、マテリアリティ(コモディティ×影響タイプ別の影響の大きさ)が高いほどより詳細な情報の優先的な把握を推奨していて、ENCORE 等を使用して分析を実施することを求めています。

このようにガイドラインが求めている事項は、中小企業にとってはハードルが高い内容です。しかし、印刷産業にとって主要な資材は紙であり、ENCOREで印刷産業のサプライチェーンのマテリアリティを評価すると、Tier2の森林関連産業で高い結果が得られます。したがって、FSC認証紙に限らず、合法性が確認できる調達先から仕入れることを方針に掲げ、購入量や比率を指標として管理し、取組状況を公表することはこのガイドラインに沿った取組とすることができます。

(2) 種の保存法在り方検討会報告書

「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の在り方検討会報告書」が7月27日に公表されました。『種の保存法』が2018年に改正され、5年経過した2023年から検討会を開催して取りまとめられたものです。今後の方向性を、1.希少種の生息・生育の場の保全、2.開発行為等による希少種への著しい影響の回避・低減、3.民間等と連携した希少種保全活動の推進、4.希少種保全に係る国と自治体との連携強化、5.希少種に係る譲渡し等規制の適正化の5項目で整理しています。このうち、1および3の項目は印刷業界にも関係があるように受け止められます。しかし、1では、開発行為の制限の観点から生息地等保護区の指定を推進するため、指定に必要な希少種の情報収集が必要である整理しています。3.に関しては、希少種を動植物園で保護する制度である認定希少種保全動植物園等制度の活用に重点が置かれ、民間企業による希少種保全の取組については「今後評価する仕組みを検討する」に留まっています。OECMに関する記載は1か所のみで重点はおかれていません。

印刷産業で取り組める種の保存活動は、前出の「調達におけるネイチャーポジティブに向けた実践ガイドライン」を参考にして、サプライチェーン、特に調達段階での自然資本への配慮の中に生物多様性を組み込むことが事業活動に伴う本質的な活動です。しかし、事業場の敷地の緑地を活用したビオトープや雨庭設置、または、地方公共団体やNPOなどが実施する種の保全活動にボランティアとして参加なども可能です。

(3) 「自然を活用した解決策(NbS)の手引き」公表

環境省が7月31日、「自然を活用した解決策(NbS)の手引き」を公表しました。NbSはNature-based Solutionsの略称で、自然が有する機能を持続可能に利用し、多様な社会課題の解決につなげる取組です。2008年に世界銀行が初めてこの用語を使用、2009年にはIUCNがこの考え方を提唱し、2018年から世界基準の検討を始め、2020年7月に初版を公表しました。2025年には第2版を公表しています。NbSの考え方は、2022年12月の「昆明・モントリオール生物多様性枠組」のターゲット8および11に組み込まれたことから、世界的に急速に広まりました。日本でも、2023年3月に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」、2024年5月に閣議決定された「第六次環境基本計画」にも組み込まれ、さらに「地球温暖化対策計画」(2025年2月)や国土交通省、農林水産省の政策にも取り入れられています。

公表された手引きは、IUCNの世界基準などとの整合性を保ちながらも、日本の実情や目指す方向性を踏まえて運用のしやすさを重視して整理しています。IUCNの8つ基準は5つにまとめられて、社会的課題を整理する、自然の多様な機能を引き出す、自然環境の保全・再生に貢献する、多様な主体の参画を促進する、取組の持続性を確保するという5つのポイントから基準が作成されています。エクセルで作成されている「セルフアセスメントツール」ではこれらの観点から自己評価できます。事例集では8つの社会課題に対して22事例が紹介されています。

この中には、印刷産業としても取り組みが可能な「雨庭」の事例が2件紹介されています。

ひとつが「小田急線上部利用施設等のグリーンインフラ」です。小田急小田原線(代々木上原駅~梅ヶ丘駅間)の地下化により、東北沢、下北沢、世田谷代田の3駅間の線路跡地の一部を公共施設として活用を進めています。ここに、「シモキタ雨庭広場」をはじめ、木陰をつくる植栽やくつろげる芝生広場、幼児・児童向けの遊具等を配置して、良好でみどり豊かな環境を創出しています。

もうひとつが「京都市雨庭整備事業」で、レインガーデンと呼ぶ方が適正な事例です。都市化に伴う水害やヒートアイランド現象等の課題に対応するため、「雨水処理機能」と「京都らしい庭園文化」を融合させた植栽空間として、平成29年度に四条堀川交差点の事例が紹介されています。

○ 環境経営

(1) 「3R行動見える化ツール」の更新

環境省が9月30日、「3R行動見える化ツール」の更新版を公開しました。このツールは、行動を進めるにはその効果を見える化することが重要であるとの観点から、3R行動による削減効果を定量的・簡易に計算できるツールです。初版は2012年4月に公開されています。食品トレーなし販売、マイボトルの使用、ペットボトルのリサイクルなどの3R行動が25種類から35種類に増加されています。環境負荷削減効果は初版と変わらず、温室効果ガス削減効果、天然資源消費量削減効果および最終処分削減効果の3つです。

このツールは主に小売事業者向けて開発されています。しかし、コピー用紙、段ボール、ユニフォーム、発泡スチロール、ペットボトルおよびインクカートリッジのリサイクルについて、その量を計測することによって、環境負荷削減効果を定量的に算定することができます。

○ 化学物質管理

情報はありません。

○ サステナビリティ情報開示

情報はありません。

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