「参考資料」に関して、他項では「事業者」に着目して法律の条項を整理していますが、この「生物多様性」の項では法律の骨格に着目して条項をピックアップしています。
生物多様性基本法
(略称:なし)
この法律は、国が生物多様性施策を進めるうえでの基本的な考え方を示した法律です。生物多様性を、遺伝子、種および生態系の3つレベルの多様性と定義しています。「事業者」で始まる条項は第6条のみで、基本原則にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、事業活動が生物の多様性に及ぼす影響を把握するとともに、他の事業者その他の関係者と連携を図りつつ生物の多様性に配慮した事業活動を行うこと等により、生物の多様性に及ぼす影響の低減及び持続可能な利用に努める責務を課しています。都道府県や市町村に対して、生物多様性地域戦略を策定する努力義務を課していますので、事業場がある都道府県・市町村が策定している場合は、生物多様性に取り組む際の参考になります。
<法律の骨格>
- 保全と利用に関する原則とその考え方(予防的順応的取組方法、長期的な視点、温暖化対策との連携)について3つの原則を定めています【3条】。
- 国に対しては、基本原則にのっとるともに、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を課している
- 【法4】。
- 政府に対しては、毎年、国会に、生物の多様性の状況及び政府が生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関して講じた施策に関する報告および施策(生物多様性白書)の提出【法10】および「生物多様性国家戦略」の策定【法11】を義務付けている。
- 都道府県及び市町村に対しては、基本原則に則った施策の実施する責務を課す【法6】とともに、「生物多様性地域戦略」を策定する努力義務を課している。【法13】。
- 事業者に対しては、基本原則に則って、事業活動が生物多様性に及ぼす影響を把握して関係者と連携して生物多様性に配慮し、影響の低減および持続可能な利用に努める責務を課している。【法6】。
自然環境保全法
(略称:なし)
この法律では、自然環境保全調査の実施や自然環境保全基本方針の策定を規定していることから、生物多様性基本法と並んで、生物多様性保全の根幹をなす法律です。しかし、自然環境を保全する区域を定めていることから、自然環境の場の保全に関する法律でもあります。「事業者」が関係する条項は第2条の責務規定のみで、環境基本法の基本理念にのっとった自然環境の適正な保全の責務を課しています。
<法律の骨格>
・ この法律では、国に対して、おおむね5年ごとに自然環境の保全のために講ずべき施策の策定に必要な自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)の実施【第4条】、自然環境の保全を図るための自然環境保全基本方針の策定【第12条】を課しています。
・ この法律に基づいて、原生自然環境保全地域【第14条】、自然環境保全地域【第22条】、都道府県自然環境保全地域【第45条】、沖合海底自然環境保全地域【第35条の2】が指定され、建物の新築・改築・増築、土地の形質変更、木竹の伐採・採取・植栽、動物の捕麓・殺傷などの行為が禁止・制限されます。
〇 原生自然環境保全地域
自然環境が人の活動によって影響を受けることなく原生の状態を維持している地域。建物の新築・
改築・増築、土地の形質変更は原則禁止。
特に保全が必要なときは区域内に立入制限地区が指定される。
〇 自然環境保全地域
自然的社会的諸条件からみて自然環境を保全することが特に必要な地域。
建物の新築・改築・増築、土地の形質変更、木竹の伐採などの行為に関して、許可が必要な特別
地区【第25条】および海域特別地区【第27条】、届出が必要な普通地区【第28条】が指定される。
さらに、野生動植物(動物の卵を含む)の捕護・殺傷、採取、損傷を禁じる野生動植物保護地区
【第27条】に指定される。
〇 沖合海底自然環境保全地域
海底の地形若しくは地質又は海底における自然の現象に依存する特異な生態系を含む自然環境が
優れた状態を維持している地域。鉱物の採掘・調査、海底に生息・生育する動植物の捕護・採取
などは許可が必要になる。
〇 都道府県自然環境保全地域
都道府県が指定する自然環境を保全することが特に必要な地域。
特別地区、普通地区を指定できる。
自然公園法
(略称:なし)
この法律は自然環境保全法とともに、自然環境の場の保全に関する法律で、国立公園、固定公園、都道府県立自然公園を規定していす。「事業者」(法第10条第6項で定める「国立公園事業者」を除きます)が関係する条項は第3条の責務規定のみで、環境基本法の基本理念にのっとった優れた自然の風景地の保護とその適正な利用の責務を課しています。印刷産業の通常の事業活動には関わらない法律です。
<法律の骨格>
- 事業者に対しては、環境基本法(平成5年法律第91号)の基本理念にのっとった優れた自然の風景地の保護とその適正な利用の責務を課している【第3条】。
- 国立公園および国定公園の指定【第5条】、解除・区域の変更【第6条】、公園事業【第9条】の手続きなどを規定している。国立公園事業は国が執行【第10条】し、国定公園事業は都道府県が執行する【第16条】。
- 国立公園および国定公園の区域内に、公園の風致を維持するために特別地域を指定する【第20条】ことができ、工作物の新築・改築・増築、木竹の伐採などは許可が必要になる【第20条】。また、景観を維持するために特に必要があるときは特別地域内に特別保護地区【第21条】を指定できる。海洋の景観維持の場合は海域公園地区【第22条】となり、これら以外の区域は普通地域【第33条】となり、事前届出となる。
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律
(略称:種の保存法、野生動植物種保存法)
この法律は、圏内に生息・生育する希少な野生動植物種(国内希少野生動植物種)または外国産の希少な野生動植物(国際希少野生動植物種)の保全するための必要な措置を定めている法律です。国内希少野生動植物種として指定された野生動植物種の捕獲・採取は原則として禁止されています。事業者に対する責務規定はありません。市町村レベルでも地域の希少種をしている場合があり、それらを含めて保全することは重要です。
<法律の骨格>
希少野生動植物種に対して講じられる『種の保存法』の措置は「個体等の取扱規制」、「生息地等の保護」、「保護増殖」、「動植物園」と大きく4つに区分され、国内の希少野生動植物種、国際的に希少な野生動植物種に分けて措置が講じられている。
〇 国内希少野生動植物種
- 絶滅のおそれのある野生動植物の種を、レッドリストを基に政令【施行令第1条第1項】で指定されている。
- 個体等の取扱規制を課し、捕獲・採取【第9条】、販売・頒布目的の陳列・広告【第17条】、譲渡し【第12条】、輸出入等【第15条】が原則として禁止されている。
- 商業的に繁殖できても国際的に種の保存を図る必要がある生物は「特定第一種国内希少野生動植物」【第2条】に指定され、捕獲等が原則禁止される。国内で繁殖事業を行う場合には届出が必要になる(環境省パンフレット「特定第二種制度の特徴」の規制概要の表参照)
- 種の存続に支障をきたす程度の個体数でなく、国際的に協力して保存を図っていなくても、その生息地・生育地が消滅しつつあったり、その生息・生育環境が著しく悪化している動物種は「特定第二種圏内種」に指定され、販売・頒布の目的以外の捕獲等、譲渡し等は可能となる(環境省パンフレット「特定第二種制度の特徴」の規制概要の表参照)。
- 生息・生育環境の保全を図る必要があると認める場合は「生息地等保護区」に指定【第36条】し、さらにその区域内で特に保全を図る必要がある区域を管理地区に指定【第37条】され、工作物の新築・改築・増築、土地の形質変更などの行為を行う場合は許可が必要になる。管理地区の区域内で、特にその保護を図る必要があると認める場所を、立入制限地区として指定することができる【第38条】。
〇 国際希少野生動植物種
- ワシントン条約(付属害I掲載種)、ニ国間渡リ鳥等保護条約・協定(通報種)に基づいて指定されている。
- 販売・頒布目的の陳列・広告【第17条】、譲渡し等【第12条】は原則として禁止され、輸出入時の承認の義務付け【第15条】られる。
〇 緊急指定種
- 緊急指定種は、新たに発見された種や絶滅したと思われていた種が再発見された場合など、特にその保存を緊急に図るごとが必要な場合に捕獲などを禁止する緊急的な措置で、指定の期聞は最大で3年間。
特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律
(略称:外来生物法、特定外来生物被害防止法、特定外来生物法、外来種被害防止法)
この法律は、特定外来生物の飼善、栽培、保管、運搬、輸入、譲渡し、放出を規制する法律です。事業者に対して、外来生物に関する知識と理解を深め、外来生物を適切に取リ扱い、国や地方自治体が行う施策に協力する責務を課しています。もともと日本国内に生息・生育していた動植物は法律の規制対象ではあリませんが、市町村レベルでは国内の他の地域に生息していた動植物、いわゆる国内外来生物を含めて外来生物を指定している場合があり、これらの情報を基にして、外来生物に対応する必要があります。
<法律の骨格>
- 事業者に対しては、外来生物に関する知識と理解を深め、外来生物を適切に取リ扱うよう努め、国や地方自治体の施策に協力することが求められている【第2条の4、第2条の5】。
- 特定外来生物【第2条】として指定される動植物は海外から日本圏内に導入されるもので、いわゆる国内外来種のように元々日本国内に生息・生育していた動植物は規制の対象とはなりません。
- 特定外来生物は原則として飼養等【第4条】、輸入【第7条】、譲渡し等【第8条】、放出等【第9条】は禁止される。
- 飼養等は、飼養、栽培、保管又は運搬と定義され【第1条】、生きた状態の個体や器官が対象になる【第2条】。
- 特定外来生物のなかでも、著しく重大な被害や国民生活の安定に著しい支障を及ぼすおそれがあり場合は「要緊急対処特定外来生物」として指定し、拡散防止の緊急措置が行われる。ヒアリやアカカミアリを含む4種群23種とその種間交雑種が指定されている。
- 実態がよく分かっていない海外起源の外来生物は「未判定外来生物」に指定され、輸入する場合は事前に主務大臣に対して届け出る必要がある。
- アカミミガメヒアメリカザリガニは2023年6月に「条件付特定外来生物」【附則第5条】に指定きれ、飼養等は可能であるが、放出等は禁止され、違反すると罰則・罰金の対象となる。
- ブラックバスは特定外来生物に指定されている。生きたまま持ち帰ると罰則の対象になる【第4条】。キャッチアンドリリースは法律上は問題はないが、都道府県によっては条例で禁止している場合がある。
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律
(略称:鳥獣保護管理法、狩猟法、鳥獣保護法、鳥獣法)
この法律は、鳥獣を対象に希少鳥獣の保護と増加した鳥獣の管理、さらに狩猟に関する規制を定めた法律です。鳥獣保護区では狩猟が禁止され、その中の区域に定められた特別保護地区では開発行為が制限され、鳥獣の保護や鳥獣の生息地の保護を図られています。この法律には責務規定はありません。
<法律の骨格>
- 『鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)』は、『鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護法)』を改正して平成26年5月30日に公布され法律です。この背景には、全国的にシカやイノシシなどの一部の鳥獣が急増し、各地で深刻な被害をもたらす一方、狩猟者が減少・高齢化し、捕獲の担い手不足が問題となっていたことがあります。『鳥獣保護法』は、生物多様性の確保や生活環境の保全などの観点から、生息数を適正な水準に増加・維持させたり、生息地を適正な範囲に拡大・維持させたりする“保護”【第2条】が目的の法律でした。鳥獣による被害拡大を受けて、適正な水準に減少させたり、生息地を適正な範囲に減少させたりする“管理” 【第2条】が加わり、法改正が行われました。管理の対象となる鳥獣は「指定管理鳥獣」【第2条】としてヒグマ、ツキノワグマ、イノシシ、二ホンジカが指定されています。
- 保護と管理は、都道府県知事が「第一種特定鳥獣保護計画」【第7条】、「第二種特定鳥獣管理計画」【第7条の2】を策定して行う。「第一種特定鳥獣保護計画」は、生息数が著しく減少したり生息地の範囲が縮小したりしている鳥獣が対象としているが、希少鳥獣は除かれる。「第二種特定鳥獣管理計画」は、生息数が著しく増加したり生息地の範囲が拡大したりしている鳥獣が対象で、指定管理鳥獣も含まれる。
- 希少鳥獣に関しては、その保護を図るため特に必要があるときは、環境大臣が「希少鳥獣保護計画」を策定【第7条の3】して保護が行われる。
- 「特定希少鳥獣」として、『「特定の地域において、その生息数が著しく増加し、又はその生息地の範囲が拡大している希少鳥獣」で「当該希少鳥獣の管理を図るため特に必要がある」鳥獣』【第7条の4】と定義して、環境大臣が「特定希少鳥獣管理計画」が策定して管理することを規定している。
- 日本国内ではこの法律で「狩猟鳥獣」として指定されている鳥獣以外の鳥獣および鳥類の卵の捕獲・採取・損傷は原則禁止されている【第8条】。
- 「狩猟鳥獣」の狩猟など、狩猟可能区域(鳥獣保護区【第28条】、休猟区【第34条】、環境省が指定した区域以外【第11条】)に限られ、狩猟期間外の狩猟は原則禁止されている。狩猟可能な区域や機関であっても、狩猟方法に制限を受けることがある。
- 鳥獣保護区には、鳥獣の保護又は鳥獣の生息地の保護を図るため特に必要があると認める区域を特別保護地区と指定され、工作物の新築・改築・増築、木竹の伐採などは都道府県知事の許可が必要になる。
- この法律には責務規定はありません。
遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律
(略称:カタルへナ法、カルタへナ担保法、カルタへナ議定書担保法、遺伝子組み換え生物使用規制法、遺伝子組み換え生物等規制法)
この法律は、遺伝子組換え生物の取扱いを規制する法律で、遺伝子組換え生物を取扱う者に適用されます。遺伝子組換え生物を取り扱うことがない印刷産業では適用されません。
<法律の骨格>
- 遺伝子組換え生物は、病害虫に強い植物が開発できる便益が得られる一方で、生存能力が強い植物によって在来の植物種の生育に悪影響を及ぼす弊害が起こる可能性があります。遺伝子組換え生物が生物多様性と持続可能な利用に悪影響を及ぼすに対して対策を講じるための国際的定めが「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタへナ議定書(カルタヘナ議定書)」です。2000年1月に採択され、2003年年9月11 日に発効しました。このカルタへナ議定書を締結するために国内措置を定めた法律が『カタルへナ法』です。
- この法律では、遺伝子組換え生物を拡散防止措置の有無によって2種類に分け、拡散防止措置があって使用・栽培・育成・加工・運搬・廃棄(使用等)する場合を「第一種使用等」【第2条】、拡散防止措置がなくて使用等する場合を「第二種使用等」【第2条】と定義して、それぞれの手続きを定めている。
- また、遺伝子組換え生物を輸出入する際の手続き、遺伝子組換え生物等の譲渡等をするときの情報の提供の義務も定めている。
自然再生推進法
(略称:なし)
この法律は、過去に損なわれた自然環境を再生するために、基本理念、具体的手順等を定めた法律で、自然再生事業を実施する者に適用されます。
<法律の骨格>
- 政府は「自然再生基本方針」を策定する【第7条】。
- 自然再生事業を実施しようとする者(実施者〉は、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、NPO、専門家、土地の所有者等の地域の多様な主体が参加する「自然再生協議会」を立上げ【法8条】、全体構想を作成し【第8条】、さらに実施計画を作成し、主務大臣ヒ管轄する都道府県知事に送付【法9条】する。
- この法律には罰則はありません。
地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律
(略称:生物多様性地域連携促進法、里地里山法)
希少な野生動植物の減少、外来種の侵入による生態系の撹乱に加え、里地里山などの二次的自然の手入れ不足などによって生物多様性が深刻な危機に直面し、地域の特性に応じた保全活動が必要となったことから、市町村が主導して生物多様性の保全活動を進める枠組みとして法制化されました。この法律には罰則はありません。
<法律の骨格>
- 主務大臣〈環境大臣、農林水産大臣、国土交通大臣)は地域連携保全活動基本方針を策定する【第3条】。
- 市町村は、単独または共同して、地域連携保全活動基本方針に基づいて、地域連携保全活動計画を作成することができる【第4条】。この際、NPO、関係住民、学識経験者、関係行政機関などで構成される地域連携保全活動協議会を組織することができる【第5条】。
- 地域連携保全活動計画で地域連携保全活動の実施主体として定められた者(地域連携保全活動実施者)が行う開発行為は、『自然公園法』、『自然環境保全法』、『種の保存法』、『鳥獣保護管理法』、『森林法』、『都市緑地法』の許可取得が免除される【それぞれ第6条、第7条、第8条、第9条、第10条、第11 条】。
- この法律には罰則はありません。
エコツーリズム推進法
(略称:なし)
この法律は、自然環境の保全に配慮しながら、地域の創意工夫を生かしたエコツーリズムを実現させるために制定された法律です。市町村長が作成したエコツーリズム推進全体構想に基づいて指定した動植物の生息地又は生育地などは保護の対象となり、立入禁止などの措置が可能になります。
<法律の骨格>
- 身近な環境についての保護意識の高まりや自然と直接ふれあう体験への欲求の高まりから、時聞をかけて自然とふれあう「エコツーリズム」が普及するようになりました。この一方で、地域の環境への配慮を欠いた単なる自然体験ツアーがエコツアーと呼ばれたり、観光活動の過剰な利用により自然環境が劣化したりする事例も見られるようになりました。このため、自然環境の保全に配慮しながら、地域の創意工夫を生かしたエコツーリズムを実現させるためにエコツーリズム法が2012年8月に施行されました。
- 政府は、市町村が作成するエコツーリズム推進全体構想の基礎となる「基本方針」を定める【第4条】。
- 市町村は、地域ごとにエコツーリズム推進協議会を組織し、エコツーリズム推進全体構想の作成と組織運営を行う【第5条】。
- 作成したエコツーリズム推進全体構想は国による認定を申請でき【第6条】、認定を受けると市町村長は動植物の生息地又は生育地、伝統的な生活文化などを「特定自然観光資源」として指定でき、汚損や損傷、観光旅行者に著しく迷惑をかける行為を禁止するなどの保護措置を講じることができる【第8条】。
- さらに、特定自然観光資源が所在する区域への立ち入り人数を制限できる【第9条】。
地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律
(略称: 自然資産区域法、地域自然資産法)
この法律は、都道府県や市町村などの地方公共団体、一般社団法人・財団法人およびNPOが、自然環境の保全の維持・管理のために入域料を徴取したリ、その土地自体を取得できることを定めた法律です。罰則規定はありません。
<法律の骨格>
- 地域の自然環境を保全し、持続可能な利用を推進するためには、公的資金のみならず、利用者負担や民間資金(民間団体などが寄附金を募って行う土地の取得・管理など)を用いた自発的な取組みを推進する目的で制定されました。
- 主務大臣(環境大臣、文部科学大臣)は基本方針を策定する【第3条】。
- これに基づいて、都道府県・市町村は地域計画を作成する【第4条】。
- 主務大臣と協議し同意を得た地域計画に従って行う行為については、『自然公園法』の許可などを不要とする特別措置を受けられる【第6条~第9条】。
地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律
(略称:地域生物多様性増進法、地域生物多様性増進活動促進法)
この法律は、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」である「自然共生サイト」を法制化した法律です。企業による森林の整備、都心における緑地の整備など地域の生物多様性を維持、回復、創出する活動の「増進活動実施計画」が認定されることにより、その実施区域が「自然共生サイト」となります。
<法律の骨格>
- 「生物多様性を維持し、回復し、又は創出すること」を「増進」と定義【第2条】して、人の活動により形成された生態系の維持・回復、在来生物の生息地・生育地の保護・整備、外来種の防除、鳥獣の管理など、地域の生物多様性を増進するための活動を「地域生物多様性増進活動」と定義【第2条】している。この活動のうちで市町村が中心となる活動を「連携地域生物多様性増進活動」【第2条】と定義している。
- 事業者に対しては、自らの事業活動における生物の多様性の重要性に対する関心と理解を深め、地域生物多様性増進活動を実施する努力義務を課している【第6条】。
- 地域の生物多様性を増進するための活動に関する実施計画(増進活動実施計画)をその計画を実施する者が作成・申請して、主務大臣が基準に適合すると判断すると認定が受けられる【第9条】。
- 市町村が実施する場合は連携増進活動実施計画となる【第11条】。
- 認定を受けると、『自然公園法』や『自然環境保全法』などで規制を受ける木竹の伐採や工作物の新築などの規制が免除される【第15条~第21条】。
- 法律には明記されていませんが、増進活動実施計画および連携増進活動実施計画に記載された活動の区域が「自然共生サイト」となります。
首都圏近郊緑地保全法、近畿圏の保全区域の整備に関する法律
(略称:いずれもなし)
昭和30年代の高度経済成長期に東京圏および近畿圏に人ロや産業が集中した際、無秩序な都市開発を避けるために『首都圏整備法(昭和31年法律第83号)』および『近畿圏整備法(昭和38年法律第129号)』が制定され、政策区域制度や近郊緑地の保全制度などが創設され、これらに関連して制定されました。
<法律の骨格>
- 近郊緑地は、『首都圏近郊緑地保全法(昭和41年法律第101号)』や『近畿圏の保全区域の整備に関する法律(昭和42年法律第103号)』で定義されている。
- 近郊緑地のうちから国土交通大臣が近郊緑地保全区域に指定する【それぞれ第3条、第5条】。さらに、この区域のうち、近郊緑地の保全のために特に必要される地区を近郊緑地特別保全地区に指定する【それぞれ第5条、第6条】。
- 近郊緑地保全区域のうち緑地保全地域及び特別緑地保全地区を除いた区域では、工作物の新築・改築・増築、土地の形質の変更、木竹の伐採などの行為を行う場合は都道府県知事へ届出が義務化される【それぞれ第7条、第8条】。
- この法律には、緑地保全地域及び特別緑地保全地区に関する規定はなく、国土交通省のパンフレッ卜「近郊緑地の保全制度について」では、『都市緑地法』で規定すると説明されています。
都市緑地法
(略称:なし)
この法律は、良好な都市環境の形成を図り、健康で文化的な都市生活を確保することを目的に、1973(昭和48)年に『都市緑地保全法』として制定され、2006(平成18)年にその内容が大幅に改正されて現在の名称となっています。
この法律では、市町村が作成する緑の基本計画【法第2章】、都市近郊の比較的大規模な緑地の保全のために行為制限をかける緑地保全地域制度【法第3章第|節】、都市の良好な自然環境となる緑地に建築行為などの行為制限をかける特別緑地保全地区制度【法第3章第2節】、緑地が不足している市街地などで建築物の新築・増築を行う際に緑化を義務付ける緑化地域制度【第4章第l節】などを規定しています。
文化財保謹法
(略称:なし)
<法律の骨格>
- この法律は、昭和24年1月26日の法隆寺金堂壁画の消失を契機として、議員立法により昭和25年に成立しました。
- この法律では、文化財として、有形文化財【第2条第1項】、無形文化財【第2条第2項】、民俗文化財【第2条第3項】、記念物【第2条第4項】、文化的景観【第2条第5項】及び伝統的建造物群(町並み)【第2条第6項】の6分野を定義しています。
- これらの文化財のうち重要なものを文化審議会の答申を受けて文部科学大臣が、重要文化財【第27条第l項】に、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いものでたぐいない国民の宝たるものを国宝【第27条第2項】に、史跡、名勝、天然記念物(法律では総称して「史跡名勝天然記念物」)【第109条第1項】に、史跡名勝天然記念物のうち特に重要なものを特別史跡名勝天然記念物【第109条第2項】に指定・選定等して、固の重点的な保護の対象としています。
- 指定・選定等された文化財については、現状変更、修理、輸出などに一定の制限が課される一方、文化庁は、有形文化財の保存修理、防災、買い上げ等や、無形文化財の伝承者養成、記録作成等、保護のために必要な助成措置を講じています。
- ここでは、定義と天然記念物に関する条項を抜粋します。
- 天然記念物のうち特に重要なものを特別天然記念物としています。しかし、法律上では、保護など方法について区別はされていません。
- 天然記念物に指定されるヒ、文化庁長官が管理する者を指定【第113条】して、滅失し、き損し、衰亡し、又は盗み取られるおそれがある場合は改善命令【第121条】を出すことによって、保護される形式をとっています。
- 「文化庁長官は、天然記念物の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができる」と規定【第128条】していますが、その名称は法律では明記きれていません。文化庁のWebサイトには「天然保護区域」の一覧が掲載されていますが、この条項との関係は不明確です。