2-3. 日本の生物多様性・自然環境保全に関連する法令
環境省は、生物多様性の日本の法体系を以下のように整理しています。

枠組みを規定する法律が『生物多様性基本』と『自然環境保全法』です。『生物多様性基本法』は、国が生物多様性施策を進めるうえでの基本的な考え方を示した法律で、5項目の基本原則を定め、国、地方公共団体、事業者、国民および民間団体の責務を規定しています。
『自然環境保全法』は、自然環境保全調査の実施や自然環境保全基本方針の策定を規定していることから枠組みを規定する法律として整理されています。しかし、この法律では、『自然公園法』と同様に、自然環境を保全する地域を指定する法律でもあるため、場の保全の法律としても位置付けられています。
動植物の保護・管理に関する法律は、生物多様性の根幹である「種」に着目した『種の保存法』、鳥獣に限定して保護・管理を規定した『鳥獣保護管理法』、日本の生態系に支障を来たしている「外来生物」を規制する『外来生物法』、さらに、遺伝子組換え生物を規制する『カタルヘナ法』があります。
生物多様性の保全活動に関する法律として最初に制定されたのが『自然再生推進法』で、過去に損なわれた自然環境を再生することを目的に制定されました。『生物多様性地域連携促進法』は、希少な野生動植物の減少、外来種の侵入による生態系の撹乱に加え、里地里山などの二次的自然の手入れ不足などによって生物多様性が深刻な危機に直面し、地域の特性に応じた保全活動が必要となったことから、市町村が主導して活動を進める枠組みとして法制化されました。『自然資産区域法』は、地方公共団体、一般社団法人・財団法人およびNPO法人などが自然環境を保全した区域への入域料を徴取したり、その土地自体を取得できることを定めた法律です。『エコツーリズム推進法』は、自然環境の保全に配慮しながら、地域の創意工夫を生かしたエコツーリズムを実現させるために制定された法律です。市町村長が作成したエコツーリズム推進全体構想に基づいて指定した動植物の生息地又は生育地などは保護の対処となり、立入禁止などの措置が可能になります。
そして、令和7年に『地域生物多様性増進活動促進法』が成立しました。この法律は、「生物多様性戦略2023-2030」の行動目標1-1にあるOECM(自然共生サイト)を法制化する法律です。
一方で、「生物多様性国家戦略2023-2030」には、法律や制度などに基づく生息・生育地の保護地域が記載されています。

『自然環境保全法』は、自然環境保全や生物多様性の確保の観点から区域が指定されます。『自然公園法』は、生物の多様性の確保も目的にあるものの、優れた自然の風景地の保護の観点から区域が指定されます。『種の保存法』は、絶滅のおそれのある野生動植物の生育地・生息地の保護の観点から区域が指定されます。『鳥獣保護管理法』は、鳥獣に限定して、その生息数や生息地が減少している地域を対象に区域が指定されます。『首都圏近郊緑地保全法』、『近畿圏の保全区域の整備に関する法律』および『都市緑地法』は、都市の緑地を確保する観点から区域が指定されます。これら法律で指定された区域内では、工作物の新築・改築・増設や木竹の伐採、土石の採取、植物の採取・損傷、動物の捕獲・殺傷、火入れ・たき火などは原則禁止となります。『自然環境保全法』の「原生自然環境保全区域」内で指定される「立入制限地区」のように立入も原則禁止とることもあります。
『文化財保護法』では、天然記念物の保存の観点から区域を定めることができると規定しています。しかし、法律には区域の名称は明記されていません。文化庁のWebページには「天然保護区域」の指定件数の記載がありますが、指定の法的根拠や文化財保護法との関連について記載はありません。
「保護林」および「緑の回廊」は国有林を対象にした制度で、森林管理局長が設定します。
生物多様性の法規制で印刷産業の事業活動に関係が深いのは『生物多様性基本法』と『地域生物多様性活動増進法』です。『生物多様性基本法』では、事業者に対して、事業活動が生物多様性に及ぼす影響を把握して関係者と連携して生物多様性に配慮し、影響の低減および持続可能な利用に努める責務を課しています。『地域生物多様性活動増進法』では、事業者に対して、在来生物の生息地・生育地の保護・整備、外来生物の防除を行う努力義務を課しています。多くの場合、事業場には緑地の確保が義務付けられていますので、この緑地を活用して在来生物の保護活動を行うことができます。地域の希少種の保護や外来種の防除は事業活動と直接の関係はありませんが、社会貢献活動のひとつとして取り組むことができます。このとき参考になるのが『種の保存法』と『外来生物法』です。ただし、市町村によっては、これらの法律と地域の状況を把握して、『生物多様性基本法』に基づく「生物多様性地域戦略」を策定していまので、策定していればこれを参考に生物多様性の保全活動に取り組むことができます。
各法律の概要については、「1.法律 (4)生物多様性」を参照してください。