2-1. 国際的な枠組み(生物多様性条約)
生物多様性に関する国際条約には、ラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約、1971年採択)、世界遺産条約(世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約、1972年採択)およびワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、1973年採択)などがあります。ただし、これらは特定の地域や種の保全に関わる条約です。生物多様性の保全全般に関わる国際的な枠組みは、「生物多様性条約」に基づいています。この条約は、1992年5月にブラジル・リオデジャネイロで開催された環境と開発に関する国際会議(地球サミット)で採択され、1993年12月に発効しました。この条約では、生物多様性の保全および構成要素の持続的な利用に加え、遺伝資源の利用から生じる利益の公正で衡平な配分が目的として挙げられています。

現在までに締約国会議が16回開催され、いくつかの節目があります。
ひとつの節目は、2000年1月の「カタルヘナ議定書」(2003年9月11日発効)の採択で、バイオテクノロジーによって生み出された遺伝子組換え生物(LMO)の安全な移送、取扱い及び利用を確保することが合意されました。
次の節目は、2010年に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)です。ここでは、「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(ABS:Access and Benefit – Sharing )」に関する名古屋議定書と、生物多様性の損失を止めるための2020年までの目標「愛知目標」が採択されました。この「愛知目標」は、2050年ビジョン「自然との共生」、2020年までに達成する4つの戦略目標、20の個別目標で構成されていました。しかし、2020年9月に生物多様性条約事務局が公表した「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)」の評価では、ほとんどの目標はかなりの進捗がみられたものの、完全に達成できたものはないという結果でした。
そして、次の節目が2022年12月の「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」の採択です。これは、「愛知目標」の後継目標であり、現在はこの枠組みのもとで世界的に対策が進められています。GBFの構成は、2050年ビジョン「自然と共生する世界」、2030年ミッション「自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとる」、2050年グローバルゴール(4項目)および2030年グローバルターゲット(23項目)で構成されています。2030年ミッションの「自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させる」はいわゆる「ネイチャーポジティブ」です。
23項目のグローバルターゲットのうち、事業者が実施または関われるものとして、以下があります。
目標3. 陸と海のそれぞれ少なくとも30%を保護地域及びOECMにより保全(30 by 30目標)
目標6. 侵略的外来種の導入率及び定着率を50%以上削減
目標7. 環境中に流出する過剰な栄養素の半減、農薬及び有害性の高い化学物質による
全体的なリスクの半減、プラスチック汚染の防止・削減
目標15. 事業者(ビジネス)が、特に大企業や金融機関等は確実に、生物多様性に係る
リスク、生物多様性への依存や影響を評価・開示し、持続可能な消費のために
必要な情報を提供するための措置を講じる
目標16. 適切な情報により持続可能な消費の選択を可能とし、食料廃棄の半減、過剰消費
の大幅な削減、廃棄物発生の大幅削減等を通じて、グローバルフットプリントを削減
目標3に関して、OECMは「民間等の取組により保全が図られている地域や保全を目的としない管理が結果として自然環境を守ることにも貢献している地域」で、企業緑地も該当します。