5月20日に第6 次環境基本計画が閣議決定されました。環境基本計画は、環境基本法(1993年)第15条に基づき、すべての環境分野を統合する最上位の計画として策定され、目指すべき文明・経済社会の在り方を提示するものです。最初の環境基本計画は1994年に策定、その後概ね6年ごとに改訂され、前回の第5次は2018年に策定されています。
今回の第6次環境基本計画は、「現在及び将来の国民一人一人のウェルビーイング/高い生活の質」の実現を環境政策の最上位の目標として掲げ、気候変動、生物多様性の損失、汚染という3つの危機に直面し、社会変革(transformative change)が急務であるとの認識のもと、環境収容力を守り環境の質を上げることによって経済社会が成長・発展でき、地上資源を基調とする「循環共生型社会」の実現を打ち出しています。そして、この実現のため6つの重点戦略を挙げています。
以下の点を注目しました。
・ 重点戦略「1 「新たな成長」を導く持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築」には、経済成長から環境負荷増大を切り離す(デカップリング)方策のひとつに「徹底した省エネルギーの推進」が挙げられ、「工場等における省エネルギー設備の導入を複数年度にわたり支援するとともに、中堅・中小企業向けの省エネルギー診断を推進する。」としています。また、製品・サービスの環境価値を適切に評価されるために、製品単位やバリューチェーン全体での環境負荷の見える化が必要であり、「製品・サービスのカーボンフットプリント(CFP)の算定、削減、表示に係る企業の主体的な取組を支援する。」としています。
・ 重点戦略「3 環境・経済・社会の統合的向上の実践・実装の場としての地域づくり」では、地域循環共生圏の構築を推進する際には、地域固有の伝統や歴史、地域に根付いたスポーツ等の文化を生かすという視点も重要であり、地域コミュニティ・ネットワークの維持・再生を支援する方向性が示されています。また、金融機関の役割を重要視し、特に地域金融機関は地域の中堅・中小企業の取組みを支援して、地域産業の競争力強化にも貢献することを期待しています。
・ 重点戦略「4 「ウェルビーイング/高い生活の質」を実感できる安全・安心、かつ、健康で心豊かな暮らしの実現」で、「フェーズフリー」の考え方が紹介され、「身のまわりにある製品やサービスを、平時はもちろん、非常時にも役立つようにデザインする」ことであり、「災害時のバッテリーにも活用できる電動バスの導入促進、平時の省CO2化と非常時のエネルギー自立化が可能となる再生可能エネルギー設備を備えた施設の整備」などを例示しています。
・ フローからストック重視があり、随所で、製品のリユース、リペア・メンテナンス、リファービッシュ、リマニュファクチュアリング、また、ビジネスとして製品や移動のサービス化、シェアリングエコノミー、サブスクリプションのサービス提供、リコマース(Re-commerce)を例示しています。
・ 生物の生息・生育空間のまとまりとして核となる地域(コアエリア)及び、その緩衝地域(バッファーゾーン)を適切に配置・保全するとともに、これらを生態的な回廊(コリドー)で有機的につなぐことにより、生態系ネットワーク(エコロジカルネットワーク)の形成に努める。
引用した以外の重点戦略は、「2 自然資本を基盤とした国土のストックとしての価値の向上」「5 「新たな成長」を支える科学技術・イノベーションの開発・実証と社会実装」「6 環境を軸とした戦略的な国際協調の推進による国益と人類の福祉への貢献」です。
VOC対策、工場・事業場の騒音・振動対策および悪臭対策については、新しい方向性は示されていません。
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