○環境関連法の法案提出、改正
2024年通常国会(第213回)に環境関連では6本の法律が提出されました。
① 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(環境省)
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DDBBF2.htm
概要:二国間クレジット制度(JCM)の実施体制強化等、地域脱炭素化促進事業制度の拡充
② 地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案(環境省)
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DDBC06.htm
解説:https://piems-lab.com/wp-admin/post.php?post=288&action=edit
③ 資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案(環境省)
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DDBF8E.htm
解説:https://piems-lab.com/wp-admin/post.php?post=294&action=edit
④ 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給および利用の促進に関する法律案(経済産業省)
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DDB72E.htm
概要:低炭素水素等の供給・利用を早期に促進するため、基本方針の策定、計画認定制度の創設、計画認定を受けた事業者に対する支援措置や規制の特例措置を講じる
⑤ 二酸化炭素の貯留事業に関する法律案(経済産業省)
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DDB742.htm
概要:CCS事業に必要な試掘・貯留事業の許可制度及び貯留権等の創設、貯留事業に係る事業規制・保安規制、二酸化炭素の導管輸送事業に係る事業規制・保安規制等を整備
⑥ 海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣府)
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DDBED2.htm
解説:https://piems-lab.com/wp-admin/post.php?post=396&action=edit
○気候変動関連
2023年の平気気温は過去最高を記録し、産業革命以前から1.45℃上昇しました。さらに、2024年1月も過去最高を記録しています。
環境省は年度末に、地域金融機関向けガイドライン、取組み事例集を公表しました。地域金融機関にとっては地域社会や地域経済の持続可能性が自らの持続可能性に直結し、融資先である中小企業を支援することにより、気候変動対策やEGS対応を促進する意図があると考えます。
① 「金融機関におけるTCFD開示に基づくエンゲージメント実践ガイダンス」
https://www.env.go.jp/press/press_03004.html
② 「気候変動対応を『チャンス』と捉えた地域金融機関による取組事例集」
https://www.env.go.jp/press/press_02991.html
③ 「ESG地域金融実践ガイド3.0」
https://www.env.go.jp/press/press_02984.html
④ 「令和5年度版 グリーンファイナンスによる資金調達を行った企業の取組事例」
https://www.env.go.jp/press/press_02964.html
この中の①の添付資料「汎用提案書」は、気候変動に係るリスク・機会、社会的動向・要請などを整理する資料として有用であり、カーボンニュートラル向け関連補助金の資料も含まれています。②では、「支援フェーズ編」に、気候変動による機会を捉えるための現状把握・影響分析に役立つ情報源リストがあり(p19)、脱炭素化事業支援情報サイト(エネ特ポータル)、再生可能エネルギー情報提供システム(REPOS)、地域経済分析システム(RESAS)などが紹介されています。
○サステナビリティ情報開示
金融庁は、金融審議会に「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」を新設し、サステナビリティ情報の開示基準や第三者保証の導入に向けた検討を開始しました。金融商品取引法を改正し、有価証券報告書にサステナビリティ情報の開示を義務付け、時価総額3兆円以上の企業から段階的に適用し、最終的に東京証券取引所のプライム企業に適用する方向で検討されています。
サステナビリティ開示基準については、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が2023年6月に、全般的要求事項(S1)と気候関連開示(S2)の2つの基準を策定しています。これを踏まえ、日本のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が日本国内の開示基準を作成中で、3月に最終案が提示され、パブコメが行われています。
また、中小企業向けには、都市銀行および地域金機関の52会員で構成する一般社団法人サステナビリティ標準化機構が「非上場・中小中堅企業向けサステナビリティ情報の活用ハンドブック ver1.0」を2月27日に公表しています。このハンドブックは当該機構ホームページの「お問い合わせ」フォームを通じて入手することができます(https://www.j-sdsc.org/)。
欧州では、2022年11月に最終化された企業サステナビリティ報告指令(Corporate Sustainability Reporting Directive; CSRD)が2023年1月に発効し、EU域内の大企業や上場企業は、2024年の会計年度からサステナビリティ情報の開示が義務化されました。米国では、米証券取引委員会(SEC)が米上場企業に温室効果ガス排出量の開示を義務付ける規則を採択しました。スコープ3は除外されたものの、スコープ1および2の排出量を2026年度から開示が義務付けられています。
大企業向けの情報開示基準にはでScope3排出量の開示が含められ、2次データから1次データが重視視されています。省エネ補助金ではCO2排出量把握が要件になっています。中小企業のCO2排出量把握の必要性から、算定支援サービスが引き続き注目され、地域金融機関も参入しています。
○自然共生
経団連が12月25日に「企業の生物多様性への取り組みに関するアンケート調査結果概要(2022年度調査)」を公表しました。19年度調査結果と比較すると企業の生物多様性への取り組みは着実に進み、定量的な目標設定は進んでいないものの、企業多くの企業で昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)に貢献する活動が進められている、とまとめられています。一方で、「指標、目標の設定や計測の難しさ」などの課題が挙げられています。GBFの貢献ついては、GBFのターゲット8「気候変動と生物多様性」、ターゲット7「肥料・農薬・プラスチック等汚染」、ターゲット15「ビジネスと情報開示」、ターゲット3「保護地域・OECM」に関連する取組みが多い結果です。ただし、ターゲット8については、「気候変動と生物多様性のシナジーのある取組を実践している企業は少数であり、必ずしも生物多様性との関連を意識せずに行われてきた取組みが、今回GBFのダーゲット8と関連付けられている可能性がある」と注釈があります。
目標・指標の例に関して、ターゲット8ではGHG排出削減、RE転換、工場緑地、植樹などが、ターゲット7では(プラ)廃棄物再資源化、VOC排出量、脱プラ製品/包装などが例示されています。
○その他
ISOマネジメントシステム規格に関して、組織が気候変動の課題を確実に考慮することを意図して、「気候変動への配慮」を追加する追補改正が行われ、ISO 9001:2015、ISO 14001:2015、ISO 45001:2018、ISO/IEC 27001:2022などの31の主なマネジメントシステム規格の追補改正が2024年2月23日付で発行されました。具体的には、4.1項「組織及びその状況の理解」に「組織は,気候変動が関連する課題かどうかを決定しなければならない。」,4.2項「利害関係者のニーズ及び期待の理解」に「注記:関連する利害関係者は,気候変動に関する要求事項をもつ可能性がある。」という記述が追加されました。
ウェブ上の質問に答えると国際基準に対応した約30ページのサステナ報告書を自動作成できるサービスが登場しました。NIKKEI GXで1月18日に紹介された内容です。