2025年度第4四半期まとめ

○ 法令等改正

印刷産業に関連する法改正などには、以下がありました。

(1) 光化学オキシダント環境基準の見直し

3Qの総括でも取り上げましたが、光化学オキシダント環境基準が「1時間値が0.06ppm以下であること」(昭和48年決定)から「オゾンとして、8時間値が0.07ppm以下であり、かつ、日最高8時間値の1年平均値が0.04ppm以下であること」に変更されました。光化学オキシダントの原因物質のひとつにVOCがあり、印刷産業はVOCを多量に排出する産業のひとつとして、オフセット輪転印刷機、グラビア印刷機、コーターなどが2004年5月に排出規制の対象となりました。産業界の削減努力により排出量は大幅に削減しましたが、VOCの環境基準達成率は低いままです。このため、環境省は、2022年3月から2024年4月にかけて開催した検討会で、光化学オキシダントのヒトの健康と植物への影響に関する知見をとりまとめました。さらに、2024年度から検討会を立ち上げて定量結果をまとめ、今回の環境基準の見直しとなりました。VOCと光化学オキシダント発生の因果関係は解明されてないため、産業界への対策の強化とはならないと考えます(印刷産業界の取組みはこちら)。

(2) 改正『資源有効利用促進法』

改正『資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)』が2025年6月4日に公布され、2026年4月1日から全面施行されました。

改正内容は、以下のとおりです。

① 定期報告(指定脱炭素化再生資源利用促進製品)

② 環境配慮設計の促進(資源有効利用・脱炭素化促進設計指針)

③ GXに必要な原材料等の再資源化の促進(指定再資源化製品)

④ CE(サーキュラーエコノミー)再生資源の利用計画策定・コマースの促進

この改正で、印刷産業が関係するのは「プラスチック容器包装」が含まれる①と②です。

①では、「脱炭素化のために利用することが特に必要な再生資源」を「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」と定義【法第2条第11項】し、この中には「プラスチック容器包装」があります【施行令第4条第2項】。事業年度の生産量または販売量が10,000トン以上の事業者は「指定脱炭素化再生資源利用促進事業者」となり、主務省令に従って、脱炭素化再生資源の利用の促進のために必要な計画的に取り組むべき措置の実施に関する計画を作成し、9月末日までに主務大臣に提出しなければなりません【法第23条第1項】。

②では、「資源有効利用・脱炭素化促進設計指針」に従った製品は大臣認定を受けることができ【法第30条第1項】、認定されると、製品への認定表示、グリーン購入法での採用などの優遇措置を受けることができます。この指針の策定対象となる製品に「指定脱炭素化再生資源利用促進製品」が含まれため、「プラスチック容器包装」も認定対象となります。

③に関して、「指定再資源化製品」はパソコンおよび小型二次電池で【施行令第7条】、「自主回収・再資源化事業計画」が大臣認定【法第54条】されると廃棄物処理法の特例措置を受けられる内容です。

④に関して、使用済物品の発生抑制を促進する基準の対象事業者である指定省資源化製品事業者として、指定省資源化製品の製造、加工、修理、販売の事業者に加えて「賃貸」事業者も含めることによりCEを推進する内容です【法第18条第1項】。(指定省資源化製品:自動車、PC、エアコン、電子レンジ、衣類乾燥機、電気冷蔵庫、収納家具、事務机など19製品)

(3) その他

『温対法』で、「森林等炭素蓄積変化量」がGHG吸収の取組みとして追加されたことから報告様式が改訂されました。また、廃棄物焼却廃熱利用量が計上不要となりました。これらの改正により「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」も更新されました(ver6.1)。ただし、エネルギー起源のCO2排出量が1,500トン未満、CH4、N2O、PFC、HFC、SF6およびNF3がいずれも3,000トン未満であれば報告は不要です。印刷産業の算定方法は、PIEMS-Lab内のWebページを参考にしてください。

現在開かれている第221回国会で環境関連法として、国土交通省2案、経済産業省・環境省1案、環境省1案の合計4案が提出されています。

○ 気候変動関連

(1) 3次気候変動評価報告書

環境省は2月16日、「第3次気候変動評価報告書」を公表しました。これは、『気候変動適応法』に基づく気候変動影響の総合的な評価で、概ね5年ごとに作成し、公表することとされ、これまで2018年と2020年に公表されています。

今回の評価報告書では、気候変動の影響を大きく受ける7分野(農業・林業・水産業、水環境・水資源、自然生態系、自然災害・沿岸域、健康、産業活動、国民生活・都市生活)について、重大性(影響の程度、可能性等)、緊急性(影響の発現時期や追加的な適応策への意思決定が必要な時期)、確信度(現在の状況や将来予測の確からしさ)の3つの観点から気候変動の影響を評価しています。

今回のポイントは、最新かつ広範囲な知見の反映、影響の重大性評価を2段階から3段階に細分化、特に強い影響を受ける地域や対象の整理などを環境省の報道発表で挙げています。今回も、温暖化による物理的変化から生じる各分野への影響をフロー図で示されています。

印刷産業の視点では、7分野のうち「健康」と「産業活動」に注目しました。

 「健康」分野では、気温上昇は熱ストレスを増加させ、熱中症の発症や死亡リスク、循環器疾患、呼吸器疾患などのさまざまな疾患による死亡、入院、救急搬送などのリスクを増加させ、蚊やダニが媒介する感染症の流行地域や患者発生数に影響を及ぼす可能性があると指摘しています。また、温暖化は、大気汚染と気温の相互影響を増強させる可能性があり、高温がオゾンによる救急出動件数の増加に与える影響を強める事例や高濃度のオゾンやPM2.5が高温による死亡リスクを増加させる事例が見られていると指摘しています。

「産業活動」分野の製造業については、気象災害によるリスクとして、極端な気象現象による土砂災害や浸水被害の頻発により道路や鉄道などインフラの寸断に伴う生産停滞、従業員の通勤や出張への影響、自社工場の被災・操業停止、サプライチェーンの寸断などが想定されています。平均気温の変化による影響としては、温度制御のためのコスト増大、労働環境の悪化と生産性の低下、夏季期間の労働自粛による売上減少などが想定されています。

(2) カーボンニュートラル診断ツール「キヅコ(KiduCO)」

中小企業基盤整備機構が3月3日、中小企業向けに無料カーボンニュートラル診断ツール「キヅコ(KiduCOリリースしました。Webページで、企業の属性情報、省エネの取組み状況、さらに、気候変動の影響で災害の頻度が高まったり大規模化したりすることも考えられるため災害時の備えについて選択肢から選択するだけで、「知るステージ」「測るステージ」「減らすステージ」「備えるステージ」かを判別し、想定されるリスクが表示されます。さらに、相談窓口や省エネセルフ診断ツールも紹介してくれます。

○ 資源循環

(1) 『プラスチック資源循環促進法』のプラスチック製品で初認定

『プラスチック資源循環促進法』は、プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化などへの対応を背景として、プラスチック使用製品の設計からその廃棄物の処理まで、プラスチックのライフサイクルに関わるあらゆる主体がプラスチックの資源循環の取組みを促進するための措置を盛り込んだ法律で、2021年6月に成立しました。この法律では、製造、販売、排出する事業者が関わる認定制度が3つあります。一つめが、廃棄物となったプラスチックの再資源化を促進するために、製造・販売事業者等が自主回収による再資源化事業計画の認定制度【法第39条】です。二つめが、排出事業者による再資源化事業計画の認定制度【法第48条】です。これらは、認定を受けることにより『廃棄物処理法』の都道府県ごとの許可を不要とする特定措置が受けられ、これまでにそれぞれ7事業者8事業者が認定を受けています。三つめが、設計・製造の段階の認定制度【法第8条】で、プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化の促進に向けた「環境配慮設計指針」(2022年1月告示)に沿ったプラスチック製品が認定の対象です。認定された製品では『グリーン購入法』の配慮事項に組み込まれたり、リサイクル材利用の設備導入の際の支援を受けられたりする優遇措置があります。1月25日に、この制度では初めて、文具で5製品、清涼飲料用ペットボトル容器で18製品 、家庭用洗浄剤容器で6製品 、家庭用化粧品容器で12製品が認定されました。

(2) 国連大学地球規模の水の破産:ポスト危機の時代における水文学的な身の丈を超えた暮らし」

国連大学が1月26日、「水破産」の時代に突入したとするショッキングな報告書公表しました。「河川や湖などの表層水が大規模に減少し、湿地は大陸規模で消滅し、氷河の喪失も進んでいる。地下水の枯渇と地盤沈下が地球上の広範囲に及び、その多くが回復不能な状態にある。もはや回復が見込める「水ストレス」とか「水危機」を通り越し、「水破産」の時代に突入した」と指摘しています。この要因には、「土地利用の変化、水の過剰配分、地下水の枯渇、気候変動などによる「人為的干ばつ」もあり、現在の水利用が生態系の回復機能を超えていることにある」としています。金融においては破産宣告することにより新たなスタートとなります。同様に、「水破産」に対しても、従来の「どうすれば元の状態に戻れるか」(危機管理)ではなく、「新たな、恒久的に制約された状況下で、さらなる崩壊や不公平の深刻化を招くことなく、どのように生きていくか」(破産管理)の発想が必要であると指摘しています。「水破産」の時代では、国連大学が提案する「水破産対策のための国および流域レベルの優先行動」に沿って、人間の基本的ニーズと重要なサービスの確保を前提にして、需要の再均衡と用途の再構成が必要であると指摘しています。

(3) その他

リサイクル・リユース関連では、「~自治体・事業者向け~使用済衣類の回収に関するグッドプラクティス集」、「サステナブルファッションの推進に向けたアクションプラン」および「リユース等の促進に関するロードマップ」が公表されています。「リユース等の促進に関するロードマップ」では、取組指標として「リユース市場規模」「リユース業者等と協働取組を行う自治体数」「生活者におけるリユースの実施率」が設定されています。

ケミカルリサイクルに関して、廃プラ油化関連で、太陽石油㈱が四国事業所で廃プラスチック由来の熱分解油の受入れ開始出光興産㈱子会社ケミカルリサイクル・ジャパン㈱市原事業所の油化ケミカルリサイクル設備が完工(使用済みプラスチック処理能力 年間2万トン)など今期も拡大に向けた動きがありました。

○ 自然共生

(1) グリーンインフラ推進戦略2030

国土交通省は1月23日、「グリーンインフラ推進戦略2030」を公表しました。これは、2025年6月に策定した「国土交通省環境行動計画」に係る実行計画で、第1次となる2023年策定の「グリーンインフラ推進戦略2023」を改訂したものです。「グリーンインフラ」を「自然の多様な機能を活用した社会資本であり、将来にわたり持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくり及びウェルビーイング向上に貢献するもの。これは、人と自然の関わりから形成されるものであり、戦略的な計画、持続的な維持管理、幅広いステークホルダーの参画などを通じてより大きな効果の発現が期待できる。」と定義しています。すなわち、生態系が有する供給、維持・調整および文化的サービスを活用して、防災・減災だけでなく、生活環境の向上や不動産価値の向上、観光資源としての活用、地域コミュニティ形成など行おうとするものです。今回の戦略では20項目のKPIが設定されています。この中には、印刷産業も取り組める項目として、「雨庭」に関する取組数と屋上緑化施工面積があります。

(2) 「生物多様性国家戦略2023-2030」の実施状況の中間評価

2月20日に環境省が「生物多様性国家戦略2023-2030」の実施状況の中間評価を公表しました。同戦略で「行動目標」として設定された25目標のほとんどが進展した一方で、「状態目標」として設定された15目標では進展があったのは半数弱に留まったと評価しています。生物多様性の損失の背景にある社会経済の状況は部分的には改善されているものの、生物多様性は損失し続けていて、回復するまでには至っていないと評価しています。事業者が取り組める指標が14項目あります。目標を達成しているのは、自然共生サイト、TNFD賛同および生物多様性に資する製品・サービスを提供している企業数・市場規模です。しかし、排出抑制・リサイクルなどのプラスチック関連指標では目標達成には至っていません。この中間評価の第1部は2月20日に生物多様性条約事務局に提出されています。

(3) IPBES「ビジネスと生物多様性評価報告書」

生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)は、マンチェスター(イギリス)で開催された第12回総会で「ビジネスと生物多様性評価報告書」を発表しました。すべてのビジネス(企業)は自然に依存しているも関わらず、自然に与えるインパクトに対するコストを負担していず、プラスの影響からも収益を生み出していません。その要因には現在の事業環境にあり、これを報告書で「可能にする環境(an enabling environment)」と定義した環境、すなわち「ビジネスの成果と生物多様性および社会の利益が一致する環境」に変革することを主張しています。そのために、政府、金融関係者、ビジネス・金融機関および先住民族・地域住民を含めた市民が協働したり、集団的・個別的行動することが必要だとして、政策と法律、経済と金融、価値観と道徳、技術・データ、能力と知識の5項目に分けて具体的な行動を列記しています。ビジネスに関しては、インパクトと依存に対処するために今すぐ必要な行動を、企業、操業、バリューチェーンおよびポートフォリオに分けて具体的に列記しています。

また、生物多様性および自然が人間にもたらす恵みに関連するインパクトや依存を測定・管理する手法は既に確立されていて、効果的な測定と分析を選択するためのツールを紹介しています。それは、位置に基づく観察、参加型マッピングとモニタリング、空間分析、ライフサイクルアプローチおよびマクロスケールの環境経済モデルです。ただし、ビジネス上の意思決定に適した単一の方法は存在せず、産業分野、意思決定レベル、ビジネスの目的に応じて採用し、科学、先住民族および地域住民の知識、手法、慣行を適切に活用する必要があると指摘しています。それでも、「可能にする環境」に対してはギャップがあり、それはデータが不足し標準化されていないこと、証拠が不完全であること、ビジネス上の意思決定に対応できないこと、データのアクセス性と透明性が低いこと、手法の採用率が低いことを挙げています(「表SPM.7 知識とその応用におけるギャップ」を解釈して引用)。このため、ビジネスは既存の手法や知識を活用して会計・経営システムに統合し、ビジネス、操業、バリューチェーンの活動と場所に関する比較可能な情報を収集・共有する行動が必要であり、ガイドラインの必要性を訴えています。

今回の報告書では、具体的な手法の名称や活用方法は示されていません。2026年末に公表される最終報告書で詳述される予定です。

この報告書に合わせ、GRIは2月16日に「Decoding biodiversity impacts(生物多様性への影響を解明する)」を公表しました。ここには、2024年から2025年にかけてGRIコミュニティの生物多様性パイロットに参加し、GRI 101生物多様性基準(2024年1月発行、2026年1月適用)を用いて報告している4社(CDL、コカ・コーラHBC、エネル、JSWスチール)の経験と教訓をまとめています。

(4) 「ネイチャーポジティブ経済移行に向けた企業価値向上ストーリー集」

環境省は3月30日、ネイチャーポジティブ経営(自社の価値創造プロセスにおいて自然の保全の概念をマテリアリティ(重要課題)として位置付けた経営)への移行支援の一環として、ビジネスにネイチャーポジティブの視点を取り入れることにより企業価値の向上につなげた20事例を「ネイチャーポジティブ経済移行に向けた企業価値向上ストーリー集」として公表しました。企業価値の向上として、財務的インパクトと社会的インパクトに分けています。財務的インパクトとして、持続可能な調達、事業継続性の確保、コスト削減、資産価値向上、競争力・連携強化、ブランド/ESG価値、成長領域の拡大を挙げています。社会的インパクトして、信頼性向上・レピュテーションリスク低減、レジリエンス・企業基盤強化、自然資本の保全・回復、共創(VC上、組織連携)を挙げています。

(5) その他

年度末に、環境省の支援事業の報告書「TNFD提言に沿った自然関連情報分析ガイダンス (地域金融機関向け)-2025年度版-」が公表されました。地域金融機関は地域経済に関する情報を集積できる立場にあり、地域経済のみならず、地域の課題解決に貢献することが期待されています。また、地域の自然に強く依存していることからも、自然資本の保全においても積極的な貢献が求められています。このため、支援事業を通じて得た知見に基づいて、TNFD提言に沿って自然関連情報を分析し、地域金融機関として自然関連のリスクと機会を特定する(LEAPアプローチのLocateおよびEvaluate)まで手法を紹介しています。

化学物質による汚染は生物多様性損失の主要な要因として挙げられていることから、化学物質管理を通じてネイチャーポジティブの実現に貢献することを目的として、「ネイチャーポジティブ推進のための化学物質管理アクションプラン Ver.1.0」を公表しました。日本の現状と課題を整理するとともに、今後取り得る対応の方向性を体系的に示しています。

『エコツーリズム推進法』に基づいて策定される「エコツーリズム推進基本方針」が変更されました。この基本方針は、法制定の翌年の2008年に閣議決定されて以降、変更されてきませんでしたが、昨今のインバウンドの拡大、オーバーツーリズム、第5次観光立国推進基本計画(令和8年度開始)などを背景に変更されました。

○ 環境経営

(1) 有価証券報告書へのサステナビリティ情報記載義務付け

金融庁は2月20日、有価証券報告書へのサステナビリティ情報記載義務付ける告示を行いました。これにより、東京証券取引所プライム市場に上場する企業で、3月31日に事業年度が終了する時点で時価総額3兆円以上の企業は2027年度の有価証券報告書から、SSBJ基準に従ったサステナビリティ情報の記載が義務付けられました。順次、1兆円以上の企業は2028年度の、5,000万円以上の企業は2029年度の有価証券報告書から義務付けられます。ただし、2年間は、サステナビリティ情報を有価証券報告書に記載せず、半年以内に訂正報告書として提出すること(二段階開示)が可能です。 SSBJ基準適用に伴い追加で開示が必要となるのは、 SSBJ基準適用に適用している旨、二段階開示やSSBJ基準上の経過措置の適用状況、将来情報やScope3温室効果ガス排出量についての社内の開示手続の記載などです。時価総額5,000万円未満の企業に対する義務付けについては未定です。

(2) 気候変動の物理的リスク評価の手引き

環境省は3月26日、「気候変動の物理的リスク評価の手引き」を公開しました。これは、 ISSB/SSBJに対応した気候変動の物理的リスクの開示や気候変動適応に取り組む企業の実務担当者などを対象として作成したもので、気候変動の物理的リスクの評価方法および分析ツールを紹介しています。代表的な物理的リスクである水ストレス、原材料調達、暑熱および洪水の4項目では具体的に例示しています。「第1章 気候変動適応の重要性」は、気候変動の物理的リスク評価や気候変動適応の必要性を知るための記載で、現時点での気候変動のまとめとしても有用です。

(3) 環境表示ガイドライン【令和8年3月版】

環境省は4月1日に「環境表示ガイドライン【令和8年3月版】」を公表しました。本ガイドラインは2008年1月に初版が発行され、2009年11月には事例などが拡充され、2013年3月に改定されています。今回の3回目の改定では、主にグリーン・ウォッシュ対策の国際的動向などを踏まえて行われ、自己宣言による環境主張を行う事業者等に対する基本項目に「製品のライフサイクルにおける、関連する側面のすべてを考慮すること」が独立した新項目となり、「環境主張の検証に必要なデータ及び評価方法が提供可能」に「情報にアクセスが可能であること 」が追加されています。

(4) 優先対象分野別自然関連リスク・機会ロングリスト及びバリューチェーンマップ

TNFDなどの自然関連財務情報開示の取組みでは、自社のマテリアルな自然への依存とインパクトを特定し、これに基づいて自然関連のリスクと機会を特定するステップを踏みます。この特定のためには、担当者・部署がTNFDやWBCSDなどが発行するガイダンスから自社に関連するものを精査し、そこに記載されているリスクと機会を抽出し、日本語に訳して整理するプロセス踏みます。そのうえで、経営層を含めて社内で検討し、マテリアルな開示すべきリスクと機会を特定します。環境省が2023年度から実施した自然関連財務情報開示のためのワークショップの実績から、社内で検討するまでプロセスで多くの時間と労力を要することが課題であることが把握できたことから、「優先対象分野別自然関連リスク・機会ロングリスト及びバリューチェーンマップ」(以下「本ツール」)をWebで公開しました。生物多様性への依存度・影響度が高く、産業規模の大きい優先対象分野を対象に、直接操業およびバリューチェーンにおけるリスクと機会を、TNFDのセクター別ガイダンス、WBCSDのセクター別ロードマップ、日本企業のTNFD関連の分析・開示結果およびワークショップの実績などを基に表示します。優先対象分野は、食料・農林水産関連分野(農林水産業、宿泊・飲食サービス業)、 建設・インフラ関連分野(建設業、不動産業、鉱業)、製造関連分野(製造業、鉱業)です。製造業では、化学、バイオテクノロジー・医薬品およびアパレルのみを対象としています。

(5) 世界経済フォーラムグローバルリスク報告書2026年版

世界経済フォーラムが1月18日、『グローバルリスク報告書2026年版』を公表しました。2026年の最大のリスクに「地経学上の対立」が浮上し、「国家間武力紛争」、「異常気象」、「社会の二極化」、「誤報と偽情報」が続いています。今後2年間のリスクでも「地経学上の対立」がトップで、 「社会の二極化」と「国家間武力紛争」がトップ5に入っています。一方、今後10年間では、「異常気象」、「生物多様性の喪失」、「地球システムの危機」がトップ3を占めています。短期的には、政治的な課題ですが、長期的には環境問題が深刻なリスクとして認識されています。

(6) ISO14001改訂

ISO14001に関して、1月5日にFDIS(最終国際規格案)が発行されました。

今回の改定は、附属書SLに適合させること、および要求事項の背後にある意図を明確にすることが目的にあります。このため、新たな要求事項はなく、現在の要求事項の言い換え、注釈の追加、附属書Aの説明の充実を行っています。ただし、新たに箇条6.3「変更管理」が加わりました。これは附属書SLへの適合の観点から追加されましたが、内容自体は附属書Aには含まれていたため、新規要求事項ではない扱いです。

「附属書SL」とは、ISOが開発するマネジメントシステムの骨格を統一するために、2012年にISOが策定した「ISO MSSの 上位構造、 共通テキスト(要求事項)及び共通用語・定義」で、これ以降に開発するマネジメントシステムは、分野特有の要求事項の追加は可能であるものの、原則附属書SLに従う必要があります。また、附属書SLの Appendix 2「調和させる構造( harmonized structure /共通の箇条番号,箇条タイトル,テキスト並びに共通用語及び中核となる定義)」とも整合させる必要もあります。

3月までの投票期間を経て、4月に改訂規格が発行する予定です。JIS Q 14001:2026は7月頃に発行される見込みです。

改訂規格への移行期間は3年間といわれています。

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